料理家・ワタナベマキさんは、酸味と塩気、コクを一度に加える梅干しを、料理の基本調味料「さしすせそ」に…

※画像はイメージです/PIXTA
日々の診療やスタッフとのやりとりの中で、ちょっとした雑談がきっかけで、患者さんとの信頼関係が深まった——そんな経験はありませんか?「話すのは得意じゃない」「診療に関係ない話は苦手」と感じる医師も少なくないですが、実はこの“雑談力”こそが、診療やチームづくりを円滑にするカギになるのです。(本稿はシャープファイナンス『イツトナLIVES』記事の再構成によるコラムとなります)
▶「MedicalLIVES」メルマガ会員登録はこちらから
日々の診療に役立つコラム記事や、新着のクリニック開業物件情報・事業承継情報など、定期配信する医療機関向けメールマガジンです。メルマガ会員登録の特典として、シャープファイナンスのサポート内容を掲載した事例集「MedicalLIVES Support Program」を無料進呈!
医療現場でも「雑談」が重要なワケ
医師という職業において、「雑談」は一見すると本筋から外れたコミュニケーションのように思えるかもしれません。しかし、実際には、問診や診察時の患者との距離感、スタッフマネジメント、さらには地域との信頼構築など、あらゆる場面でこの“雑談力”が大きな役割を果たします。
医療の現場では、患者が本音を語るかどうかが、診療の質を左右することがあります。また、経営者としてスタッフと良好な関係を築けるかどうかも、医療機関の運営に直結する課題です。そのような中で、短時間で相手の緊張を解き、信頼を得る力──すなわち「雑談力」は、単なる会話術ではなく、ひとつの経営スキルと捉えるべきフェーズに入ってきています。
エネルギー、承認、物語…「雑談力」が高い人の3つの共通点
筆者がこれまで見聞きしてきた人のなかには、経験により雑談の重要性を認識し、自分なりに「雑談力」を高めている人が多くいました。「雑談力」が高い人には、下記のような3つのうちのどれか「共通点」があります。
1.「反応」にかけるエネルギー量が高い
雑談力の高い人は、エネルギー量の高い「反応」をしています。雑談が上手な医師は、相手の話に対して、診療と同じくらい丁寧なリアクションをしています。たとえば「そうなんですね、それは大変でしたね」と声に出して反応するだけでも、患者さんは“この先生はちゃんと聞いてくれている”と安心感を得ます。
雑談のひとつの方法として「雑談に参加している」ということを、これでもかというほどアピールすることが大切な時があります。そのために「反応」をすることがカギになってきます。
2.「承認」のアプローチを多く使っている
「それはすごい経験ですね」「なかなかできることではないです」といった“承認”のフレーズは、雑談における潤滑油です。患者の話、スタッフの相談に対しても、まずはその発言の価値を肯定することで、会話がスムーズに進みます。これは診療でも人材育成でも、根本的には同じ構造です。
3.「物語」を語り、聞くことができる
優れた雑談の本質は、「情報のやりとり」ではなく、「ストーリーの共有」です。患者から「最近、よく眠れなくて…」と聞いたときに、「いつ頃からですか?」「何かきっかけがありましたか?」と自然に話を掘り下げる姿勢があると、患者は「この先生はちゃんと自分のことを聞いてくれる」と感じ、信頼関係が生まれます。また、自らも短くパーソナルなエピソードを挟むことで、相手が話しやすい空気をつくることが可能です。
イギリスのスタンフォード大学の研究によれば、「物語性のある説明は、事実や数字といった情報だけの説明より、22倍も記憶に残る」というデータがあります。物語を語る・聞き出す雑談をするだけで、あなたは「記憶に残る人」になるのです。
「同調しすぎ」も考えもの…雑談力が“低い”人の共通点3つ
一方で、雑談がうまくいかない人にも共通する傾向があります。
1.雑談=「無駄」ととらえている/苦手意識を持っている
医師の中には、時間効率や論理性を重視するあまり、雑談に価値を見出せない方もいます。しかし雑談は、信頼形成や情報の深掘りといった“間接的な成果”に大きく関与しています。この認識を変えるだけで、雑談に対する姿勢も自然と前向きになるはずです。
特に高齢者や初診の患者さんは、医師の表情や反応に敏感ですので信頼形成の手続きとして、決して無視はできないものです。
2.お決まりの同調、定型の相づちしか打てない
心理学の分野では、「傾聴」が重要なコミュニケーションスキルといわれています。しかし、単調な同調や共感には注意が必要です。
「そうですよね」「大変でしたね」といった表面的な共感を繰り返すだけでは、むしろ相手に「適当にあしらわれている」と感じさせてしまうこともあります。相づちを打つときは、自分なりの視点やリアクションを交えるよう心がけると、会話の質が大きく変わるはずなのです。
終始同調と共感だけを繰り返していては、相手任せで会話が広がらず深まらず、お互いに得るもののない時間になってしまいます。
3.表情に乏しく、あまり笑わない
雑談においては「感情を共有する」ことが肝心です。相手のユーモアに対して無表情でいると、それだけで場の空気が冷え込みます。笑顔やリアクションは“共感”と“安心”のメッセージです。診療中はもちろん、スタッフとの面談や会議など、あらゆるシーンで意識すべきポイントです。
また、失敗談を話した際に、深刻に同情しすぎるのも考え物です。話し手は、「笑い飛ばしてほしい」と思って話している場合があります。見極めは難しいときもありますが、相手が話すトーンによって臨機応変に反応を変えられると良いでしょう。
医療現場でも実践できる、「雑談力向上」トレーニング
最後に、雑談力を高めるために、医療現場でも取り入れやすい2つの実践ポイントを紹介します。
1.エピソード(物語)を添えて話す癖をつける
前述のとおり、物語は人の記憶に残ります。話を共有するとき、その背景や自分が感じたことまで含めて話すようにすると、会話に“厚み”が生まれます。情報の裏にあるストーリーを意識的に加えることで、対話の質が向上します。
具体的には「情報を伝えるとき、エピソードを加えて話す」ことを習慣化する。ビジネスの話題であっても、自分なりに大事にしている考え方や理想について、なぜそのような考えをもつに至ったか、物語を加えて語れるとよいでしょう。
2.話すより、「聞く」ことを意識する
また、雑談において大事なのは“話す”ことよりも“聞く”ことです。
雑談を盛り上げようと、自分ばかり話してしまう人がいます。サービス精神旺盛なのは悪いことではありませんが、雑談において主役はあくまで“相手”です。聞き役として相手の話に集中し、適切なリアクションを返す。その姿勢自体が、信頼形成の第一歩となります。特に患者との対話では、「聞いてくれる医師」こそが選ばれる時代です。
雑談というスキルは、単なる会話テクニックではありません。信頼を築き、組織を円滑に動かすための“経営的能力”でもあります。これからの医療現場で求められるのは、医学的知識や治療技術だけではなく、対人関係における繊細なコミュニケーション能力です。
雑談力を磨くことは、結果的に診療の質を高め、組織全体を活性化させる。経営者として、また現場のリーダーとして、いま一度「雑談の価値」を見直してみたいですね。
- 著者:
編集/幻冬舎ゴールドオンライン
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
記事紹介 more
少子高齢化などを背景に医療ニーズが年々高まる一方、医療業界においては深刻な人材不足が喫緊の課題となっ…
勤務医のなかには、自身の属性を活用して不動産投資を行っている人が少なくありません。しかし、これは開業…
開業を検討される先生方には「新規開業」または「承継開業(M&A)」という二つの選択肢があります。かつ…
「ジャパニーズウイスキー」として国際的な評価が高まり続ける国産ウイスキー。しかし生産国・日本に住む私…
日々の診療やスタッフとのやりとりの中で、ちょっとした雑談がきっかけで、患者さんとの信頼関係が深まった…
医師としてのキャリアプランを考えるうえで、「いずれは開業したい」という考えの人も少なくないでしょう。…
医院の承継に係る費用(承継価格)は譲渡側にとっては引退後の豊かな生活資金のため、譲受側にとってはでき…
医療の仕事は「話す仕事」でもあります。診療時の面談はもちろん、同僚や多くのスタッフと迅速にやりとりす…