近年、医療分野でAIの活用が急速に進んでいます。なかでもAIによる事前問診は多くのクリニックで導入さ…

※画像はイメージです/PIXTA
近年、医療分野でAIの活用が急速に進んでいます。なかでもAIによる事前問診は多くのクリニックで導入されており、患者として利用したことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、業務効率化や患者満足度向上が期待できる「AI問診」も、安易な導入はかえって混乱を招く可能性があります。そこで今回、医療コンサルタントがAI問診のメリット・デメリットや導入を検討する際のポイントを解説します。
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医療分野でも積極的に進む「AI活用」
近年、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を気軽に利用できる時代が到来し、医療分野でも活用が急速に進んでいます。その背景にあるのは、少子高齢化に伴う人手不足の問題です。
また、2019年から始まった「働き方改革」により、社会全体が長時間労働を好まない傾向があります。より短時間で高い成果を出す「生産性向上」が求められるようになり、AIを活用した業務効率化に注目が高まっているのです。
クリニックにおいては、すでに画像診断支援(レントゲンや内視鏡)や診療支援(AI問診、AIカルテ)などでAIの導入が進んでいます。
AIは既存業務の一部を担うだけでなく、新たな付加価値を生み出す役割も果たしており、結果として医師や看護師、事務スタッフの負担軽減だけでなく、患者の満足度向上にも寄与しています。
なかでも「AI問診」は、クリニックで積極的に導入されている代表的な活用方法のひとつです。
AI問診とは、従来の紙の問診票をスマホやタブレットなどのモバイル端末に置き換え、AI技術を組み合わせることで問診業務の効率化を図るシステムのこと。
AIが患者の症状を確認しながら最適な質問を自動生成し、分岐を繰り返すことで症状をより詳細に把握することが可能です。
AI問診のメリット・デメリット
AI問診のメリットは、なんといっても来院前に患者の症状が明確になる点でしょう。AI問診はクリニックの予約時に患者に入力を求めるケースが多く、従来の「来院時の記入」より早く主訴が明確になり、必要に応じて事前検査(インフルエンザや新型コロナなど)を行うこともできます。これにより、感染症に関するトリアージも可能です。
患者にとっても、AIの質問にしたがって症状を入力することで、より適切な診療科を選びやすくなり、受診のミスマッチを減らすことができます。
従来はたびたび生じていた「患者がクリニックを受診したものの、十分な診療体制が整っておらず、結局他院へ紹介される」といった事例も、AI問診の導入により軽減が期待できます。
一方、デメリットとしては「デジタル機器の操作」が挙げられます。特に高齢者にとっては紙の問診票のほうが使いやすく、なじみがあることから、AIを活用した「事前問診」を導入しても実施されないケースが珍しくありません。
また、設問数や分岐が多すぎる場合、若い世代でも途中で面倒に感じて離脱してしまうケースがあります。
このような背景から、AI問診を導入しても結果的に利用者が少なく、かえって非効率になる恐れもあるので注意が必要です。
AIを導入すべきクリニックとそうでないクリニックの違い
AI問診の導入を検討している場合、自院が向いているかどうかを見極めることが、導入効果の最大化につながります。
向き・不向きを見極めるポイントは、下記の4点です。
1.患者の年齢層
AI問診の導入に向いているかどうかを判断する際は、まず「患者の年齢層」に注目しましょう。
AI問診は「スマホを自在に使いこなせる患者が多いこと」が重要な条件であり、対象となるのは10代から60代が中心です。また、この場合は乳幼児も、保護者が操作するため対象に含まれます。
一方、高齢者が多いクリニックの場合、患者がAI問診を敬遠する傾向が強く、導入しても効率化につながりにくい可能性があります。
2.問診の形式
次に、従来の問診形式が「言語ベース」なのか「画像ベース」なのかも、AI問診を検討するうえで重要な要素です。
言語ベースの問診とは、身体や皮膚などの部位を直接見なくても、言葉のやり取りだけで成立するものを指します。これに対して画像ベースは、身体や患部を視覚的に確認することで成立するものをいいます。
現状、AI問診を導入するのであれば、言語ベースのほうが適しているでしょう。
しかし、今後はスマホのカメラ機能を活用して患部を撮影し、その写真から症状を推定するなど、画像ベースの問診が発展していく可能性も秘めています。
3.患者やスタッフのIT習熟度
また、患者やスタッフがITに慣れているかどうかも導入に大きく影響します。
たとえば、もともとシステム化が比較的進んでいるクリニックであれば、新たにAI問診を導入しても大きなハードルにはなりません。院内に新しいシステムを受け入れる基盤があるためです。
一方、長年問診やカルテ、予約票などを紙で運用してきたクリニックがいきなりAI問診を導入しても、患者もスタッフも戸惑ってしまい、うまく機能しない可能性が高いでしょう。
4.問診にかける時間
AIを導入すればたしかに時間短縮や効率化が叶います。しかし、問診に「十分な時間をかけたい」と考えるクリニックもあるでしょう。代表的なのは精神科です。
実際、ある精神科クリニックでは、医師の診察に入る前に患者の悩みを整理し、気持ちを落ち着かせることを目的に、問診や予診(予備診療)を丁寧に行うことを重視しています。こうしたクリニックがAI問診を導入すれば、かえって患者満足度が低下してしまうかもしれません。
このように、診療の方向性によって、AI問診、ならびにAIの活用には向き・不向きがあるのです。
AI活用で「業務効率化」と「患者満足度」の両立を叶えるために
ここまでみてきたように、AI問診は、「業務効率化」と「患者満足度」の両面から導入の是非を判断する必要があります。
業務効率化とは、患者の待ち時間や滞在時間の短縮、スタッフの業務負担の軽減です。そして患者満足度は、その業務効率化の結果として高まるものと考えられます。
ただし、AI問診の導入そのものを目的にしてはいけません。導入はあくまで手段で、導入によってどのような効果を得たいのか、その目的を明確にすることが重要です。
- 著者:
大西 大輔 MICTコンサルティング株式会社 代表取締役
一般社団法人リンクア 理事
知的探求塾 アドバイザー
穴吹国際みらい専門学校 非常勤講師
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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