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【医師が解説】次世代で生き残るクリニックへ…「医療DX」がもたらす“Win-Win”の関係

【医師が解説】次世代で生き残るクリニックへ…「医療DX」がもたらす“Win-Win”の関係

※画像はイメージです/PIXTA

新型コロナの影響で加速した「医療のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)」。オンラインでの診察や服薬指導などを導入するクリニックが増えています。しかし、デジタル化やDXにともなうコスト負担や「一過性のブームではないか」との疑念から、導入をためらっているクリニックもあるのではないでしょうか。そこで今回は、阪神地区で6院、都内で消化器内科のグループ医院を経営し、開業医コミュニティ「M.A.F」を主宰する梅岡氏が、クリニックのDX化がもたらす「2つの大きな変化」について解説します。

クリニックのデジタル化やDXで起こる「2つの変化」

1.患者さんの細分化されたニーズに対応可能

インターネットやSNSの普及などにより、近年の患者さんは自身の健康や病気について積極的に情報収集を行っており、医療に関する知識が豊富になっています。そのため、クリニックが患者に提供する医療は、より個別化されたものである必要があります。

クリニックがデジタル化を進めることによって、患者さんそれぞれの要望に合わせた治療はもちろんのこと、包括的な医療サービスを提供することが可能になります。たとえばオンライン診療や患者さん向けのアプリ、Web予約システム、Web問診、キャッシュレス会計といったものです。患者さんにとって便利なサービスを導入していくことは、他クリニックとの差別化にもつながります。

2020年から始まった新型コロナウイルスの流行において、「診察は受けたいものの感染が心配でクリニックへ出向くのに抵抗がある」という患者さんの声は非常に多くありました。

耳鼻科や小児科など、あまりオンライン診療に向いていない診療科もありますから、もちろん実際に来院して診察を受けていただくのがベストです。しかし、オンラインで簡単な診察を行うことができれば患者さんの不安感を減らすことができ、またクリニックにとっても顧客獲得・病状の把握につながるなど、双方にとってメリットがあります。

また、開院のころから患者さんのご意見として、「待ち時間の長さ」は必ずと言っていいほど指摘されやすい点です。筆者の経営するクリニックではこの待ち時間の長さを軽減するため、開院時から「順番予約システム」を導入し、患者さんのストレスフリーな来院をサポートしています。

自宅に居ながら診察を受けたいのか、実際にクリニックに行って診察してほしいのか、院内滞在時間を少しでも短くしたいのか……。「患者さんが求めていることはなにか」を汲み取り、デジタル化を追い風にそれぞれのニーズに応えていく仕組みづくりをしていくことが非常に重要です。

2.業務負担の軽減

クリニックでは診療以外にも、診療記録の作成や保険証確認、問診、会計作業や診療報酬請求書の作成など、多くの業務があります。

かつてはこれらすべてをマンパワーで行わなければならず、膨大な作業負担がありましたが、デジタル化によりこれらを軽減することが可能となりました。一番身近なものは、「電子カルテシステム」です。すでに多くのクリニックで導入されており、手書きで行う作業が激減しました。

クリニックの収入を左右する重要な業務として、カルテを読み取り、「国民健康保険団体連合会」や「社会保険診療報酬支払基金」などの各関係機関に診療報酬の請求を行う「レセプト業務」がありますが、紙カルテに走り書きされた診察情報と格闘する必要があったこのレセプト業務も格段に時間を短縮でき、効率的に作業できるようになりました。

そのほかにも、検査結果の確認や蓄積されたデータとの連動、過去のカルテや検査結果の照合などもワンクリックで行うことができ、「効率化」と「正確な業務」の両立が可能です。また、患者さんへ情報提供する際にもとても便利なツールとなっています。

これからの数年は今まで以上のスピードでAI技術が進歩、浸透し、身近なものになっていくでしょう。電子カルテシステムも今以上に使い勝手よく改善されるでしょうし、すでに「自動受付機」や「自動支払機」の導入も始まっています。クリニックを取り巻く環境は激変していくと確信しています。

このように、クリニックがデジタル化することで生まれた「医師やスタッフの時間」は、どのように活用すればいいのでしょうか。これは、患者さんに寄り添うことに集中し、AIやデジタル機器にはできない対応により特化する必要があるでしょう。

筆者のクリニックで毎年行っている患者さんへのアンケート結果を見ても、診療自体の満足度と同じレベルで、医師や看護師、スタッフから受けた「心配り」や、患者さんに寄り添った「行動」に満足したというお声が届きます。

デジタル化に業務を任せて怠けるのではなく、患者さんに満足していただけることに時間を使うべきでしょう。単にデジタル化で終わらせず、クリニックを変革することこそがDXと言えます。

一般企業も医療に参入…競争激化のなか重視したいこと

また、それと同時に考えておかねばならないのが、「少子高齢化」です。労働人口が減り、人手不足に陥るクリニックも増えていくことが予想されます。

最近では、一般企業が薬の宅配やオンライン処方などの事業を始めたというニュースが流れました。企業が医療に参入するなか、医療機関にしかできないこと、医師が介在することで届けられるものの「差別化」を考えなければいけない時代になってきました。

デジタル化で正確性の向上や効率化を図るかたわら、クリニックで働く我々にしか提供できない「価値」を突き詰めていく必要があるでしょう。

著者:
医療法人梅華会 理事長 医師 梅岡 比俊(うめおか ひとし)

開業医コミュニティ「M.A.F」主宰
兵庫県芦屋市出身。奈良県立医科大学を卒業後、勤務医を経て2008年に兵庫県西宮市に梅岡耳鼻咽喉科クリニックを開設。2011年に医療法人社団梅華会を設立。現在、阪神地区に耳鼻姻喉科4院、小児科2院、東京都内に消化器内科のグループ医院を経営する。
2016年に開業医がよりよいクリニック運営を行うための学びの場として、「M.A.F(医療活性化連盟)」を発足。
著書『クリニック人財育成18メソッド』(https://maf-j.com/books/2021women/
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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