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連日の激務に耐えかねた年収1,400万円の勤務医「もうやってられない」…医師不足でも増え続ける「開業医」との“驚きの年収格差”【医師が激白】

連日の激務に耐えかねた年収1,400万円の勤務医「もうやってられない」…医師不足でも増え続ける「開業医」との“驚きの年収格差”【医師が激白】

※画像はイメージです/PIXTA

勤務医と開業医の大きな違いに「給与」があります。では、勤務医と開業医の収入には具体的にどれほどの差があるのか……高座渋谷つばさクリニックの武井智昭院長 が、自身の経験や知り合いの事例も交えつつ、開業医の“懐事情”を紹介します。開業のメリット・デメリット、開業の成否を左右する重要なポイントと一緒にみていきましょう。

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勤務医が減って開業医が増えている

近年、開業医の増加傾向が顕著です。厚生労働省が発表した「令和5年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告」によると、全国の医療施設の数は179,834施設(前年比-1,259施設)となっています。うち、20床以上の病床を持つ「病院」は8,122施設(同-34施設)、病床を持たない「一般診療所」は104,894施設(同-288施設)でした。

しかし、さらに詳しくみると、一般診療所のなかでも「有床」が5,641施設(同-317施設)であるのに対して、一般的なクリニックである「無床」は99,253施設(同+29施設)と、医療施設のなかで唯一増加傾向にあるのです。

医師不足が叫ばれる昨今、医療施設は減少傾向にあるものの無床の一般診療所が増加しているということは、勤務医が減って開業医が増えていると考えられます。

この要因として、

① 長期休暇や学会出張など、公私のバランスについて自分のペースでスケジュールを組むことができるため、ワークライフバランスが飛躍的に向上する
② 院内の人間関係のストレスからの解放
③ 診療時間終了後の突発的な対応がなくなる

などがあげられます。とはいえ、これらはあくまでも開業医の副次的なメリットに過ぎません。勤務医と開業医のもっとも大きな違い、医師が開業を目指す大きな目的のひとつは「収入」、これに尽きるでしょう。

勤務医と開業医の“懐事情”

「第24回医療経済実態調査報告(令和5年)」の調査によると、一般病院の勤務医は年収1,400万円~1,500万円、医療法人化した診療所の開業医は2,600万円でした※。
※勤務医の場合、大学病院・国公立や公的病院か医療法人かで待遇の詳細は異なる。

筆者自身、病院勤務医であったころ、主たる勤務先からの支給額は、当直月3回とオンコール月6回を含む時間外手当を含んで、年収は1,400万円ほどでした。また、知り合いの大学病院勤務医師は、常勤先からの給与が年500~600万円程度とかなり安く、ここに週1回の外勤(年400万円)に加えて、1回10万円程度の外部の当直勤務に月3~4回行って、合計年収1,400万円程度を維持している状況です。

このように、薄給激務という過酷な労働環境に耐えかねた勤務医が「もうやってられない」と独立開業に舵を切る気持ちは、医師であれば納得でしょう。

一方、開業医の場合は、開業の立地条件や診療科・診療内容・規模などによってさまざまですが、がんばり次第で驚くほど稼ぐことができます。たとえば、標準的な内科クリニック(医師1名、看護師・事務2名)で、患者が1日40名程度であれば年収は前述の2,400万円ほど、また、保険診療単価や公費の治療(予防接種・乳児検診など)の割合が多い小児科では、同じ人数でも年収3,000万円ほどとなります。

そして、診療規模を拡大して来院人数を増やすことができれば、年収は格段に上がります。筆者の知り合いに、非常勤医師を複数雇用しながら医師2~3名体制を維持し、1日患者数平均200人を実施している院長がいます。そのクリニックは、月の売上が約5,000万円、年間約6億円と大幅な黒字のクリニックです。そしてその院長は、自分の年収約1億5,000万円。早急に医療法人化し、さらに分院展開に取り組むなど、精力的に規模を拡大させています。

診療だけではない…開業医が抱えるリスク

とはいえ、当然ですが、クリニックの開業にはさまざまなリスクが伴います。

自分の代診となる存在がいないことや、患者や家族からの訴訟対応といった、経営者としてのスタッフ管理・行政上の責任などの業務は避けられません。これは勤務医にはない大きな負担です。さらには赤字経営が続き、資金繰りも困難となれば、閉院や自己破産という深い傷を負うことになります。

失敗する開業医の特徴

前述の院長のようなケースはひと握りの成功例であり、反対に、意気込んで開業したものの、クリニックの運営に失敗してしまうケースは少なくありません。では、クリニックを開業するにあたって、失敗する原因なんなのでしょうか。

たとえば、立地選びやスタッフ採用の失敗、過剰な内装投資などがその例だといえるでしょう。しかし、クリニック運営にもっとも影響を与える要素は、開業医の「経営者としての経験、スキル」です。

経営者は、マネーリテラシーの高さが求められます。たとえば、保険診療をメインにクリニックを運営する場合、診療報酬請求の知識が必要となります。

自分の診療でどれだけの請求ができるのか、患者負担はどれくらいなのか、検査や処置に必要な薬価・機材の価格などなど……クリニックの経営者として、“金勘定”は避けて通れません。このほかにも、有給休暇や時間外労働、社会保障にかかわる労務の知識を学ぶ必要もあるでしょう。また、集患や増患への対策も、重要な経営維持のための重要な側面です。

こうした経営努力には、患者やその家族の視点から考えることはもちろん、スタッフとの良好なコミュニケーションが欠かせません。

クリニックの一部では、患者満足度といったフィードバックがあります。ゆっくり丁寧に話す、患者やスタッフの提案をまずは受け入れるなど、コミュニケーション能力を高めることが成功への鍵となるでしょう。診療所は、病院で行われるような検査が少ない分、患者と雑談する場面も多くあります。

クリニックを成功させるために

クリニックの運営に成功している医師の共通点として、

●患者・スタッフを第一に考えていること
●信頼できるオーラがあること
●コミュニケーション能力に優れていること
●患者にとって適切な医療費に設定がされていること

などがあげられます。どれも当たり前のように感じるかもしれませんが、いざ開業して「経営者」になると、これらを実践・維持することの難しさを痛感するはずです。

クリニックの独立開業は、医療のみを行っていた勤務医時代と大きく異なります。法務・労務の知識や経営センス、コミュニケーション能力など、求められるスキルはさまざまです。もしもあなたが開業を検討しているのであれば、勤務医として働いているあいだにこれらの点を意識し、磨いておくことをおすすめします。

著者:
武井 智昭/高座渋谷つばさクリニック 院長(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)
小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。
多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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