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牡蠣を食しに厚岸へ……「Rの付く月」を超える、旅の目的とは

牡蠣を食しに厚岸へ……「Rの付く月」を超える、旅の目的とは

「Rの付く月に牡蠣を食べよ」という常識を、あっさり覆してくる土地がある。北海道・道東、厚岸(あっけし)湾。昆布の森が育むこの海域では、牡蠣は季節を限定する食材ではない。多忙な医師が休暇を使って“わざわざ行く価値”を持つ、明確な個性がある。目的地として選ばれるべき理由を、牡蠣を糸口にひもときます。

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「もうすぐRの付く月が終わるのに、なぜ牡蠣なのか」と思う方もいるかもしれません。しかし、北海道の南東部に深く切れ込む厚岸湾では、その季節の区切りは無効です。
一年を通して牡蠣を出荷する厚岸、また夏の旬を持つ仙鳳趾の牡蠣。釧路町(仙鳳趾)から厚岸町へと続く厚岸湾内の冷涼な水域は、季節ごとの景色はもちろん、その海からの幸は、ポイントごとに明らかに違う表情を見せてくれます。

本稿では、厚岸を目的地の軸に据えつつ、同じ湾内に連なる仙鳳趾を共に紹介します。

釧路町公式サイト「昆布の森国定公園」(注釈:筆者)

厚岸・「小ぶり」に込められた生産哲学

厚岸の牡蠣の特徴のひとつとして、他産地と比べて殻は小ぶりかもしれません。しかしこれは欠点ではなく、明確な設計思想の結果なのです。

厚岸が採用するシングルシード方式では、0.2mmに粉砕した牡蠣殻に稚貝を一粒ずつ付着させ、カゴの中で波に転がしながら育てます。冷たい海中で転がり続けることで殻は削れ、小ぶりになる。一方でカップ(殻の深さ)は深くなり、身は詰まる。身入りに対して貝柱がしっかりしているのも特徴です。

約30カ月の育成期間中、養殖場は6回移動します。成長段階に応じて、最もプランクトンを摂取できる環境を選び抜くためです。この手間が、「生で食べたときに最もおいしい牡蠣」を生み出していると言います。

あえてサイズを抑え、生食での最適解を環境と時間で実現する――。厚岸古来のDNAを持つ種苗を用い、この海域に適応した牡蠣を育てる哲学は、2000年の出荷開始以来四半世紀を超え、一貫しています。

また厚岸の牡蠣は、汽水湖環境で稚貝から一貫育成されます。身にほどよい塩味と張りがあり、旨味が凝縮しています。芳醇な風味と甘さ、そして余韻の長さが特徴です。3種のブランド展開により、同じ厚岸でも育成環境による違いを楽しめます。そして年間を通しての出荷を可能にする環境は国内唯一です。

牡蠣を食しに厚岸へ……「Rの付く月」を超える、旅の目的とは

厚岸湖と一望する展望レストラン付き道の駅・厚岸コンキリエ。オイスターバーの他、各種食堂あり

厚岸湾という一体性――仙鳳趾、20キロ先の個性

厚岸町釧路町仙鳳趾。行政区分は異なりますが、いずれも厚岸湾と昆布の森という同一水域に連なる産地です。距離にして約20キロ。このわずかな差で、生産の哲学そして味わいが明確に別の個性を持ちます。

稚貝から一貫生産で、大きさを抑えた旨みの牡蠣が厚岸。
一方、仙鳳趾の牡蠣は、より冷涼な外海寄りの水域で育ちます。稚貝は主に宮城県の松島より移植し昆布の森の海域ならではの「仙鳳趾」牡蠣に仕上がっていく。殻と身入りは大ぶりなものが多く、味わいは口いっぱいに広がるクリーミーな甘さが際立つ、火を通しても縮まないパンと張った果実のような身。出荷時期が主に8月から12月末である点も厚岸とは異なります。
強い甘味と濃厚なコクの強烈なインパクト。大きなものだと一口では食べきれないサイズ、隅々まで余さずクリーミーで甘い……厚岸湾という同じ海の中で生まれた、強烈な個性のもう一端。しかし驚き、そして喜び。美味さにこぼれる笑みは厚岸湾に共通です。

牡蠣を食しに厚岸へ……「Rの付く月」を超える、旅の目的とは

仙鳳趾には季節になると幾つかの牡蠣直売所が販売を始める。釧路市内では釧路駅近くの和商市場など

厚岸蒸留所が生む、もう一つの目的

2016年稼働の厚岸蒸留所は、アイラ島を手本にしたウイスキー造りで国際的な評価を獲得しています。二十四節気シリーズはTWSC2022で最優秀蒸留所賞を受賞。2025年2月には、北海道初のシングルブレンデッドジャパニーズウイスキー「冬至」も発売されました。地元飲食店にのみ販売される「牡蠣の子守歌」というブレンデッドウイスキーも好評です。
JR厚岸駅裏にある「道の駅コンキリエ」のオイスターバールでは、潮のニュアンスを持つシングルモルトと、ミネラル感のある牡蠣を合わせる提案がなされています。地元蒸留所との連携は、この土地ならではの楽しみ方です。

蒸留酒やワインに惹かれる方には、この北の果てに足を運んだご褒美となるような情報を。厚岸駅前のビジネスホテル「ホテル五味」です。外観はごく素朴な宿ですが、食堂の3冊あるメニューリストには国内外の希少なボトルに加え、厚岸蒸留所のウイスキーがほぼ全て揃います。愛好家やプロフェッショナルがこの場所に足を運ぶ理由は、バックバーを見れば理解できるはずです。
牡蠣と最高の酒。その目的において、これほど合理的な宿は他にありません。

牡蠣を食しに厚岸へ……「Rの付く月」を超える、旅の目的とは

ソムリエ資格も持つオーナー五味さんの営むバーは、夕食時刻の後から23時ごろまで。連泊しても飲み切れない深みが待っている。

遠さが、旅の純度を高める

釧路空港から厚岸や仙鳳趾は車で約1時間半。あるいは釧路市内に出てからJR花咲線でゆっくりと向かいます。決して「ついで」に立ち寄る場所ではありません。しかし、だからこそ「牡蠣を食べに行く」という動機が明確になります。多忙な医師にとって、目的の曖昧な移動は避けたいものです。厚岸は、明確な目的地として機能します。
殻を開け、冷たい海のミネラルを含んだ一粒を口に運ぶ瞬間、移動時間の長さは確かな体験へと溶けていきます。

一年中、"旬が続く"という確実性

一年のどこを切り取っても、訪れるべき最良のものがある――。これが厚岸湾の最大の強みです。
牡蠣ならば通年楽しめる「厚岸産」、晩夏から冬にピークを迎える「仙鳳趾産」。もし牡蠣が苦手なら、冬ならば釧路であがるタチ(タラの白子)」があります。濃厚で滑らかな旨味は、本州のそれとは明確に異なります。
釧路町のシレパ岬から厚岸湖の湿原を超え続く昆布の森一帯では、秋には極上のエゾバフンウニ、春から夏には専門店もある「つぶ貝」、春先には希少な濃厚な旨み時知らず(鮭)」と、美味の波が絶え間なく続きます。いつ訪れても昆布の森が支える道東の食の厚みが、必ず迎えてくれます。
多忙なスケジュールの合間に取る休暇で、「時期外れ」のリスクは極力避けたいところ。その点、厚岸湾は期待を裏切りません。

「Rの付く月」に縛られない、北の海の実力。まずは、牡蠣を食しに厚岸へ
その一行だけで、旅は十分に成立します。
時間を使うに値する場所は、そう多くありません。厚岸湾は、その数少ない選択肢のひとつです。

牡蠣を食しに厚岸へ……「Rの付く月」を超える、旅の目的とは

厚岸駅を超えた辺りから特徴的な湿地帯の中を走る花咲線。アジア東端の駅、根室駅へ向けて北の景色に包まれ進む

【厚岸・仙鳳趾(釧路)info】

 厚岸アクセス釧路空港から車で1時間、または釧路駅までバス(50分)のち、JR釧路本線(花咲線)にて厚岸駅まで60分。
 仙鳳趾アクセス厚岸駅から車で25分、釧路駅から電車で尾幌駅(40分)駅から車で10分にて釧路町仙鳳趾村。老者舞は更に15分ほど海に向かい坂を下りる。

ホテル五味 :JR厚岸駅前に建つ、素朴なビジネスホテルだがその食堂兼バーは別の顔を持つ。座るなり置かれる3冊のドリンクメニューは刮目。予約は各種予約サイトから。

厚岸漁業協同組合直売店エーウロコ』:厚岸駅から徒歩20分ほど。質の高い魚介類や厚岸産の牡蠣の購入、牡蠣はその場で電子レンジで蒸す食べ比べ試食も楽しい。

道の駅 厚岸・コンキリエ』:牡蠣や厚岸にまつわる物産品など。レストランやオイスターバー、炉端焼きなど様々な形で厚岸の食を楽しめる。

昆布森漁業協同組合:釧路町の昆布の森地区の漁協組合。仙鳳趾の牡蠣を扱う。
釧路市釧路町は隣接する別自治体※

和商市場:JR釧路駅からほど近い、大型の市場。魚介類を中心にお土産や朝食の勝手丼(好きな具を店先で選び載せてもらう、観光の定番だが飽きさせない)などが有名。蟹や新巻鮭の大物が目立つが、塩辛なども地元民から支持される品質と価格。

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