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M&Aによる医院承継を成功するための7つのステップ【税理士が解説】

※画像はイメージです/PIXTA
医院の承継とは現在開業しているクリニックを譲り渡し医院経営を続けること。承継方法は大きく分けて3通りあり、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)があります。そこで今回は近年増加傾向であるM&Aについて、日本クレアス税理士法人/執行役員の中川 義敬税理士が解説します。
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【1】M&Aの流れ
M&Aをする場合の売り手と買い手の流れを大まかに示すと次の通りです。

① 条件の整理
売り手は承継時期や希望金額を整理しましょう。その際には、医院の資産・負債も明確にしておきましょう。買い手は承継時期・金額の他に希望する場所や診療コンセプトを明確にしておくと良いでしょう。
② 専門家を探す
承継の手続きを進める前に、まずは専門家に相談しましょう。ここでの専門家は、M&Aを取り扱う税理士を含む士業や民間のM&A事業者、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センター等が挙げられます。主な契約は仲介契約とアドバイザリー契約の2つの形態があります。
医業における承継は株式会社の承継と異なる特徴が複数あるため、医業に強い専門家を探されることをお勧めします。承継においては手続きの過程で組織や財務などの医院の重要な情報を第三者へ開示します。契約に至らなかった場合にこれらの情報が漏れてしまう事態を避けるため、初期段階で秘密保持契約を締結することが重要です。
③ トップ面談
相互にM&A相手として適切かどうかを判断するために人柄や経営への想いを伝え、売り手・買い手相互の理解を深めることを目的としています。売り手側にとって、買い手の診療方針や将来ビジョンは重要視される項目です。書面では知りえない双方の想いを知る重要な場となります。
この段階ではまだ条件交渉等はおこないません。
④ 基本合意契約
トップ面談が終わり、買い手が売り手に対して意向表明書を提出することで意思表示を行い、売り手は受諾の是非を検討します。受諾した後、大まかな契約内容を固めた基本合意契約を締結します。
この契約は、一般的に法的拘束力は持ちませんが、独占交渉権など一部条項は法的拘束力を持ちます。
⑤ デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、買い手が最終契約の前に売り手の事業の実態を把握し、価値やリスクを評価するために売り手の内部資料の分析や経営層へのインタビューを行うことをいいます。税務・会計・法務・労務など様々な領域の調査を任意で必要に応じて行います。
ここで不都合な事実が判明した場合、譲渡価格の減額や交渉の中止につながる恐れがあるため、売り手は不都合な事実を隠そうとする動機が生じます。しかし事実の隠蔽は損害賠償の請求や交渉の中止につながることもあるため、そのような事実こそ売り手の方から開示する姿勢が望まれるでしょう。
⑥ 最終交渉・最終契約
デューデリジェンスを実施したら、最終交渉に入ります。デューデリジェンスの結果を踏まえて契約内容や価格の変更をしたうえで、双方納得する内容になったら最終契約を締結します。
最終契約書は基本合意契約をもとに作成されます。最終契約は基本合意契約とは異なり法的拘束力を持つ契約です。原則、締結後に破棄はできないためしっかりと内容を確認しましょう。
最終契約を締結したら医院の引継ぎを実施します。従業員や患者への説明には時間を要するため、引継ぎ期間も確保しておきましょう。
⑦ クロージング
売り手に買い手が譲渡対価を支払い、経営権を移転させることでクロージングが完了します。
おわりに
医院の事業承継は売り手・買い手にとって時間も労力もかかるものです。ご高齢の先生の中には急な体調変化などにより、急いで承継を行い交渉力が弱くなることや、時間がかかることにより精神的に負担が大きくなる場合もあります。
近い将来承継をお考えの場合には、一度身近な税理士などの専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。
- 著者:
日本クレアス税理士法人
執行役員/中川 義敬 税理士(近畿税理士会所属)
【経歴】2007年税理士登録、2009年に日本クレアス税理士法人入社。
現在に至るまで、東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。
医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院までをサポートしてきた医療分野での高い経験を生かすため、2019年7月大阪本部 本部長に就任。現在に至る。
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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