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【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

診療所に並ぶ一冊の本が患者さんやスタッフの心を開き、繋ぐ。書籍を薬、紹介文を処方箋に見立てた「本の処方箋」プロジェクトは、待合室や診察室での月替わりの掲示をクリニックに関わる全員によるリレー方式で繋いできました(7月公開記事にて紹介)。今回はロコクリニック中目黒のスタッフが実際に選び、院内に掲示してきた処方箋から3冊をご紹介します。この処方箋は、事例としての取り組みであると同時に小さな書評としてもお読みいただけます。

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チーム・ロコクリニックが送り出す「本の処方箋」プロジェクト

2025年7月17日公開のインタビューで紹介した「本の処方箋」の成り立ち。
診療時間を越える試み。月1冊の“本の処方箋”がクリニックにもたらした変化とは?【事例/ロコクリニック中目黒】

今年で5年目になる「本の処方箋」プロジェクトは、医師・看護師・医療事務・療法士など、クリニックのチームメンバーそれぞれの視点から選ばれた本と、その効能を書いた処方箋が待合室・診察室に掲示されます。実際に本が並ぶ、クリニックの本棚=薬箱から、まずは2021~22年の3冊をどうぞ。

“自然の恵みで自ら心のケアをしたい方へ”

【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

薬名『自然ぐすり』(森田敦子/ワニブックス
効能:為になる/落ちつく

■6月は看護師/植物療法士 菊地さんの処方

おばあちゃん子だったわたしは小学生の頃、夏休みの大半を農業を営む祖父母の家で過ごしていました。3時のおやつは畑から野菜をむしり、遊び疲れた日は生姜と梅干しを入れた番茶を飲ませてもらったり。
上京し、仕事生活は昼夜逆転したりと知らず知らずと不調を来していました。

そんなとき出会った植物療法。この本を読み、改めて生活が身体の土台を作ってくれるんだなと腑に落ちることがたくさん。日々、自分の身体や心の声にちょっと耳を傾けて、頑張らずに今できるケアから試していく、そんなことの手引きになってくれる本です。

6月おすすめハーブ「ユーカリ」

梅雨入りで気温や気圧の影響を受けやすく、頭痛や気だるさといった不調が出やすい時期にはスーパーリフレッシュのユーカリ。ディフューザーなどで焚いたり、レモンとブレンドしてルームスプレーとして香らせたり。
床掃除にも使えるので梅雨特有のジメジメとした湿気やカビ対策にもおススメです!

“ひと言のことばで表せない感動を人に伝えたい方へ”

【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

薬名『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース/創元社
効能:ためになる/コミュニケーションが豊かになる

■1月は 医療事務 白澤さん の処方

最近は、人と直接会って感動を共有したり、「空気を読む」「阿吽の呼吸」「思いやり」など、言葉を使わない“気持ち”でのコミュニケーションの機会が少なくなっています

「言葉では言い尽くせない」という表現があるように、言葉で“気持ち”を伝える難しさは、海外でも共通のようです。

この本は、一言では訳せない世界の言葉が短い文章と素敵なイラストで紹介されていて、言葉の意味に思いを巡らせたり、絵本のようにデザインを楽しむこともできます。家族や友人と一緒に、それぞれお気に入りのページを見つけたり、普段は伝えられない“気持ち”を添えて贈り物にするのもオススメです♪

“夫婦関係や子育てに向き合う、全ての方へ”

【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

薬名 『妻のパンチライン』(@wifeisking/幻冬舎
効能:笑える/全国の夫婦が納得する

■2月は 看護師 河野さん の処方

私は昨年度入籍をし夫婦生活がスタートしました。同棲期間を踏んでから結婚したとはいえ、生活の仕方の違いや考え方にぶつかることが幾度となくありました。そこで出会ったのが、こちらの本です。
家族というものを会社に喩えながら、一つのあるべき姿を示しつつ、関西弁で旦那の言葉や態度を切っていきます。所々ハッとさせられながら、当たり前に感謝することや、相手の気持ちを想像することを考え直させられる、素敵な本です。

子どもができた時にまたこの本を見返して、「あぁ~わかる~」って言いたいし、旦那には必須で見せます!笑

【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

2021年という年、処方の背景(ロコクリニック中目黒・瀬田宏哉医師)

2021年、始まったばかりの『本の処方箋』からのラインナップ。編集長的立場の瀬田医師に、この時期と処方された本について振り返りをいただきました。

2021年と言えば、コロナ禍の全盛期。目黒区の中でも私たちは感染症診療の最前線で、夜間や休日もオンラインを含め多くの患者さんを診ていました。
当時は恐怖のウィルスであり社会的な制限も大きく、診療中のネガティブな感情や反応に覆われて、診療中の空気もピリピリしていた時期です。
そんな中、リレーで繋ぐ「本の処方箋」はスタッフ間の気持ちを繋ぐ側面もあり、チョイスされる本の多様な視点が院内に柔らかさを取り戻してくれたと思います」

確かに、この時期の3冊を振り返ると、
・植物療法士でもある看護師の菊地さんは「植物に触れることでの癒し」
・医療事務の白川さんは「言葉を越えて、言葉で理解しあう提案」
・看護師の河野さんは「鋭すぎる言葉たちを、一度引いてみた笑いの共感」
と、人々の分断や傷を癒し、繋ぎ直す“薬”として機能したのかもしれません。
もちろんどの本も、今も読まれている賞味期限の長い本です。

皆さんは誰に、どんな本を処方してあげたいですか。

【事例・本の処方箋 】『自然ぐすり』/『翻訳できない世界のことば』/『妻のパンチライン』

医療法人社団LOCO ロコクリニック中目黒
24時間365日、全てのタイプの救急患者に対応する、エマージェンシー・ルーム(ER)で医師としての経験を積み重ねてきた、共同代表の嘉村 洋志医師と瀨田 宏哉医師が2018年に中目黒に立ち上げた平日夜間23時まで、土日も受診のできる『アージェントケア』を標榜するクリニック。
2024年に画像検査センター『LOCO SCAN』のある目黒川沿いへ移転し、街に開かれたギャラリーを併設、また待合室の個室の多い運用で地域に開かれつつも個々の患者、家族や属性に配慮の深いクリニックとして街で暮らし働く人々を支えている。
https://loco-clinic.com/

提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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