東京都、千葉県、神奈川県の3つの都道府県に面した広大な東京湾。(湾内には70以上の人口島があり、多く…

医療法人社団Human Love vision book
組織内の目標や、あるべき姿を経営者とスタッフで共有する…その思想を組織に浸透させ、育てていくということは医療機関でも必要とされるノウハウです。スタッフが方針やコンセプトを共有、共感して働けるクリニックでは離職率も低く、患者さまの診療体験の満足度も自然と高くなる傾向にあります。今回、このコラムではクリニックの開業や、開業後の運営を支援する株式会社TEN EXPERIENCEさまの事例紹介をインタビュー形式でお届けいたします。
医療の未来を照らす。vision bookがもたらす可能性
その本を開くだけで、新しい仲間に組織や経営者のVisionを伝え、いつか迷いをもった未来の自分やスタッフたちに「みちしるべ」を思い出させる…『vision book』は完成してからの活用が何よりも大切といいます。
今回ご紹介する医療法人社団Human Love(以下、Human Love)では、新入職員の研修にvision bookを活用しています。どんな組織にしていきたいかVisionを共有し、「一緒に作っていきましょう!」というお話しを初めにされています。
また、理念を体現してくれている職員を表彰する「Love&Thanks Award 」を新設しました。「Love&Thanks Award 」は、「Human Love12の“あたりまえ”」を実践していただいている方に、スタッフ同士で感謝を伝えあう企画です。たくさん感謝された人、たくさん感謝をした人をAwardの受賞者とします。それに伴い、「そもそも、Human Loveらしさって何だっけ?」とvision bookを手に取る機会も増えているんですよ。各クリニックでも、目立つ場所にvision bookが張り出されているとアミン先生は語ります。
TEN EXPERIENCEはクリニックTEN渋谷のプロデュース・運営支援を行っている会社です。その経験やノウハウを生かす形で、2023年から他クリニックに対しての経営支援・BPOサービスを開始しました。
今回は、2024年2月から取り組んだHuman Loveでのクリニック、グループ・組織内でのヴィジョン共有を目的とした「vision book」制作プロジェクトをご紹介します。プロジェクトに携わったHuman LoveとTEN EXPERIENCEのメンバーが集まり、その背景から完成後の展望、組織に起こった変化まで語りつくします。
組織の拡大には「意思の語り部」が必要不可欠
――まずは、医療法人社団Human Loveについて教えてください。
アミン(Human Love理事長):医療法人社団Human Loveは医療法人として、複数のクリニックを運営している組織です。当院の大きな特徴は、土日祝日も診療を行い、昼休みを設けずに診察を行う点。患者さんがいつでも来院できる環境を整えており、基本的に来院された方は断らない方針を掲げています。専門的な治療や検査が必要な場合には、必要に応じ病院への紹介を行っており、患者さまがより良い治療を受けることができるようにしております。
――なぜ「断らない」方針を掲げているのでしょうか。
アミン:少しでも心身に不安があるとき、すぐ来院できる病院を目指しています。相模原にある本院では1日に400人以上、秋津院でも毎日300人以上の患者さまにご利用いただいています。ただ大勢に来院してもらうだけでなく、患者さまの満足度を高く保ちつつ、スタッフや医師も生き生きと働ける環境を大切にしています。
今後も各地に展開する予定の一方、ただ新規開院しスタッフを増やすだけではダメなので。我々らしいクリニックには、コアとなる想いをつなぎ、実践していくことが大切です。これから参画する未来のスタッフたちにも自分事となる「道しるべ」が必要と感じていました。そんなときに出会ったのがTEN EXPERIENCEだったのです。

金児民(アミン先生)医療法人社団Human Love理事長
山口(Human Love):最初はクリニック向け診療予約システム「Fanka」の導入検討で、TEN EXPERIENCEがトータルプロデュースを行う「クリニックTEN渋谷」を見学し、その際にクリニック紹介ツールの「vision book」を見せていただきました。
TEN EXPERIENCE:クリニックTEN渋谷の「vision book」は、患者さまや医療業界に対しての理念を可視化するまさに「道しるべ」として作成されました。現在は、院内ワークショップやイベント、またマネジメントにおいても「院内の共通認識を形成するためのツール」として活用されています。
アミン: 本院は開業以来、様々な取り組みにスタッフ全員でクリニックを育ててきました。最初に方向性を示したのは代表の私ですが、ここまで成長できたのは私だけでなくスタッフたちが想いを繋げてくれたからです。今後、時代や環境の変わるときに迷いや変化もあるでしょう。だからこそ、いまの想いを形にしておきたい。迷ったときに戻れる場所をつくりたい。「今やるべきことはこれだ」と確信しました。
人の温かさを感じられる、血の通った本をつくる
――vision book制作のプロセスについて教えてください。
TEN EXPERIENCE:制作は大きく3つの段階で進められました。ヴィジョンの言語化ワークショップ(3ヶ月)、vision book制作(3ヶ月)、ヴィジョン共有の1dayワークショップです。
――まず、最初の言語化ワークショップについて教えてください。
TEN EXPERIENCE:言語化ワークショップの前、スタッフの皆さんに個別インタビューをさせていただきました。今後の事業展開にあたりアミン先生はよく「血が薄まらないようにしたい」とおっしゃっていた。私はこのプロジェクトを推進するには「(自分事である)語り部を増やす」ことが大切だと考え、プロセス設計をしていました。
ただ、インタビューを進めるうちに、アミン先生の思想がすでに驚くほど浸透しているとわかりました。そこで皆さんに根付いている思想を、自らの言葉で言語化するプロセスを通し「自分たちが掲げたヴィジョンである」という意識=強力な当事者意識のある語り部になってもらおう、と考えました。まずは、スタッフの想いを徹底的に聞き「ワークショップを通して想いを確認し統合していく。想いの結晶をベースとした本へ」というプロセスにしました。

模造紙や付箋を使いながら、「Human Loveへの思い」を見える化した1dayワークショップの様子
――次に、実制作のプロセスについても教えてください。
TEN EXPERIENCE:構成・コピーライティング、ディレクションを担当しました。またWS担当者がスタッフへのヒアリングやワークショップで抽出したエッセンスを基に、Human Love様と一緒に目線合わせをしながら、より伝わるように整理していきました。例えば言葉をより柔らかくしたり、図解したほうが良いところは図に起こしたり。
――想いを形にしていく過程では、大変だったことも多かったのではないかと思います。このプロセスを振り返ってみて「特に大変だった」と思うことはありますか?
アミン:完成まで本当にたくさん会話をしました。だから情報量が多くなってしまい、取捨選択にとても迷いましたね。全部詰め込んでしまうと、本当に大事なことが伝わりづらくなってしまいますから。
TEN EXPERIENCE:vision bookの完成形を読んでいただけると分かると思うのですが、ポジティブで、ずっと色褪せない抽象度の高い内容で構成されています。でも制作当初は、創業の思い、組織や業界の課題といった具体的な内容も盛り込んでいました。
アミン:具体的に説明したほうが解りやすいだろうかとも悩みました。でも、私はポジティブでキレイなおとぎ話のような普遍性とストーリー性を持ち合わせた世界観にしたくて。ネガティブなことを中心にどんどん削ぎ落としたら、今の形になりました。

何度もブラッシュアップを重ねたラフ案の最終形
――デザインのプロセスについても教えてください。
TEN EXPERIENCE:まずはイメージの方向性のヒアリングから始めました。ヒアリング内容からムードボードを作って、どのグラフィックが近いか伺ったところ、「広がり」や「熱」を感じさせるようなものが多くて。想いが“じわっ”と広がっていくイメージをビジュアルに落とし込みたいと考えて、デザインを作成していきましたね。
――アミン先生の言葉で、「血が薄まらないようにしたい」というお話もありました。
TEN EXPERIENCE:まさに「血が薄まらない」の解釈にこだわったのが、このデザインです。100パーセントの想いを、100パーセントのまま伝えたい。そのためにも、本から温かさが感じられるといいと思って。なので、全ページに広がりを感じるグラデーションを使用したり、体温を感じられる薄いピンク色がかった紙や配色を採用しました。

温もりを感じるデザイン、vision bookの「Human Love Story」ページ(抜粋)
――そして、ついにvision bookが完成するわけですね。
山崎(Human Love):制作過程を見ていたので「これはいいものができるぞ」とは思っていました。実物は画面で見るよりも色鮮やかだし、手触りもいい。内容はもちろん、クリエイティブとしても素晴らしいものになったと思います。
アミン:「ニュー・スタンダードであること」未来のスタンダードとして普遍性のあるものとして育っていくことを目指しました。小さな子どもにも伝わるよう「単純で平易な言語化・ビジュアル化」にしていくことや、現状の数字、クリニック名、個人名などの変化する可能性のある具体は載せていないことも、このこだわりからです。vision bookには、時代を超えても色褪せない、純粋な想いだけを載せています。
――では最後のプロセス、ヴィジョン共有の1dayワークショップについても教えてください。
TEN EXPERIENCE:1dayワークショップを簡単に説明すると「スタッフ全員に向けたvision bookのお披露目会」です。組織の「語り部」を増やす目的で作ったのですから、ただ配って読んでもらうだけではもったいない。お披露目の場で「想い」を改めて受け止めてもらいbookに「機能」してもらうため、すぐには配布しないことにしました。
――お披露目会なのに、配布しないとは?
TEN EXPERIENCE:配布する前に、スタッフ一人ひとりが思う「Human Loveらしさ」や「好きなところ」を壁に設置した「らしさの木」に付箋で貼り出すプログラムを行いました。vision bookは、そのあとに配布したのです。その流れにすることで、自身で書き出したことと、配布された本の内容との重なりを感じられるプロセスにしました。配布後はじっくり読んでいただいて、そののち再び同じプログラムを行いました。

「Human Loveらしさ」の出るハート型の付箋を活用
その過程で「自分が思う理想の組織(Human Love)と、Human Loveが組織として掲げるヴィジョンの重なり。このヴィジョンは自分のものだ」と気づけます。
この組織の一員として、これから自分は何をすべきなのか。未来に向けて1歩踏み出せるような場にしたいと考えてのワークショップ企画でした。
――ワークショップの終わりにスタッフ全員の今の想いを語ってもらったとのことですが、どのようなものでしたか?
アミン:スタッフの想いと会社の想いが一致しているのがわかって、すごく嬉しかったですね。改めて「TEN EXPERIENCEがパートナーで良かった」と思いました。
医療の未来を照らす。vision bookがもたらす可能性
――TEN EXPERIENCEは、社外に向けたvision bookのプロデュースを今後さらに広げて行きたいそうですが、どんなプロデュースをしたいですか?
TEN EXPERIENCE:今回はvision bookの制作でお手伝いさせていただきましたが、空間設計やグラフィック制作のサポートなど、いろんな角度からお手伝いできます。クリニックのフェーズや想い、条件に合わせて伴走できる、寄り添いながら、最適な形にできるメンバーが、TEN EXPERIENCEには集まっていると思います。
きれい事を語ることは時に否定的に捉えられる傾向がありました。でも、私たちはきれい事を語りたい。そして実現させたいし、できると信じています。私たちの小さなクリニックから始まったvision bookですが、これは単なる1冊の本ではありません。医療に携わる人たちの想いを未来へつないでいく。1冊、また1冊と増えていけば、必ず医療界全体が優しく温かい場所に変わっていくはずです。その変化は、もうすでに始まっています。
物語の続きは、いかがですか?
TEN EXPERIENCEが始めた医療業界への変革の挑戦。今回の事例である医療法人社団Human Loveとの取り組みは、その後スタッフからのフィードバックやそれを汲んだ新たな展開が始まっているそうです。
vision book制作後の後日談や、TEN EXPERIENCEが経営されている医院の見学、伴走のご相談はぜひ下記からお問い合わせください!
- 著者:
株式会社TEN EXPERIENCE
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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