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画像はイメージです。
医療法人の設立のベストタイミングを行政書士が解説します。
医療法人という言葉はドクターなら聞いたことはあると思いますが、今回はその設立のタイミングについてのコラムです。
内容は 1.医療法人の数はコンビニとおなじ!? 2.設立の動機ベスト3とは? 3.どのタイミングで医療法人の設立を考えたらよいか?です。
医療法人の数はコンビニの数と同じくらい
個人開業のドクターにとって医療法人はどのようなイメージをお持ちでしょうか?診療報酬が多く上がっている上位層のみが医療法人を設立している、というイメージをお持ちのドクターもいらっしゃるようです。
診療所のうち医療法人が開設している割合はどれくらいと思われますか?
国などの公共団体を除く民間の診療所のうち、おおよそ医科診療所の約2件に1件、歯科診療所の約4件に1件は医療法人が開設しています。特に医科診療所は約10%が社会福祉法人による開設ですので、むしろ個人開業の方が割合としては少ないというのが実際のところです。
ちなみに、医療法人の数はコンビニの店舗数とちょうど同じくらいです。
データ出典
厚労省 医療施設動態調査(令和4年3月末概数)
厚労省 医療法人数の推移(令和3年3月31日現在)
JFA コンビニエンスストア統計調査月報
医療法人を設立する動機ベスト3
多くの医療法人の設立のお手伝いをしてきましたが、動機としては主に3つです。
1.税金対策
最も多いのが、税制面で様々なメリットがあるために医療法人を設立するドクターです。たとえば個人の所得税率が最高約56%であるのに対し、法人の税率が約34%であることを活用できるなどです。
その他の医療法人設立するメリットについては次回のコラムで解説いたします。
2.分院展開
ご存知の通り、個人の開業医は1つのクリニックでしか管理者になれませんので、分院を開設することはできません。
医療法人だと分院長を管理者に任命して複数の診療所を開設することができます。分院開設というと、積極的に広く展開するイメージがあるかもしれません。そうした医療法人だけでなく、本院だけでは増加した患者さまに対応できなくなった場合に、本院を拡張や移転するのではなく、すぐ近くの建物に分院を開設するケースもよくあります。
また、医療法人は介護事業、訪問看護、サ高住や整骨院、歯科技工所等の隣接分野へ展開して一体経営することもできます。
3.事業承継
事業継承にも医療法人が活用されます。親子間の医業承継の場合、大先生が開設した診療所を若先生が引き継ぐ場合には、診療所の建物、内装、医療機器といった財産を譲渡、リースまたは贈与することになります。このときに若先生に買取り資金が必要になったり、贈与税がかかってしまう問題が出てきます。
そこで、医療法人設立時に先代院長が施設や医療機器を現物拠出することで、買取り資金の借り入れや先代院長からリースをすることなく、しかも贈与税がかかることもなくスムーズに次世代のドクターに診療所を引き継いでもらうことができます。
どのタイミングで医療法人の設立を考えたらよいか
ここまで、医療法人について書いてきましたが、どのタイミングで医療法人の設立を考えたらよいか、医療法人を設立しても損をしないタイミングについてズバリお話します。
いつか医療法人を設立しようと考えているドクターは、ここだけ読んでいただければよいかもしれません。
1.概算経費を使えなくなった
診療報酬が保険診療のみで5,000万円を超えた、または自由診療込みの合計で7,000万円を超えたタイミングです。
開業医の所得、わかりやすく大まかに言えば利益は、診療報酬から帳簿をつけて計算した経費を差し引いて算出しますが、一定の診療報酬以下の個人開業医は、税務上の所得を計算するときに、経費を概算で計算してもよいことになっています。この概算経費の制度を利用すると、多くの開業医は実際の経費から所得を算出する場合よりも有利になっています。逆に利用できなくなると、実際の利益率は変わらないのに税務上の所得が一気に増えて税金の負担が大きくなるため、手取りが少なくなってしまいます。
この概算経費を利用できなくなるくらい診療報酬があることが医療法人の設立を考えるタイミングとなり、医療法人を設立するドクターが多いです。
確定申告書で調べるには、概算経費を利用している場合に添付する、収支内訳書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》があるかどうかを確認すればわかりやすいです。
2.所得金額
所得金額は、わかりやすく大まかに言えば診療報酬から経費を引いた利益=開業医の所得です。
確定申告書で調べるには、申告書のにある所得金額欄を確認してみるとわかりやすいです。
申告書に記載されている所得金額が2,000万円を超えるあたりで、所得税が最高税率になっていることが多いので、法人化シミュレーションをして医療法人設立の検討をはじめるタイミングです。
医療法人設立後は、理事長となるドクターの役員報酬に給与所得控除がある一方で、社会保険が強制加入となるため、ドクターや従業員、親族役員の分の厚生年金保険料などの負担が増えることが多いです。所得金額が2,000万円を超えても、医師国保、歯科医師国保に加入しているかどうかなどによって、手取りが変わらないシミュレーション結果が出ることもありますが、目安としては所得金額が2,500万円を超えているクリニックなら、医療法人を設立すると税金面ではメリットがある間違いないタイミングです。
3.医療法人の設立は年に2回
医療法人を設立したいと考えても、いつでも自由なタイミングで設立できるわけではありません。医療法人の設立には都道府県などの認可が必要で、申請する時期は年に2回(県によっては年3回)しかありません。
次の図は東京都の例でのスケジュールのイメージ図ですが、準備をはじめてから設立まで約10ヶ月程度かかります。
分院展開や隣接分野に展開するために医療法人を設立したいと考えている場合には、都道府県ごとのスケジュールにあわせて、準備をはじめましょう。医療法人設立後すぐに分院を開設することも、設立と同時に分院を開設することもできます。
いかがだったでしょうか?
気になることがありましたら、無料相談も行っておりますので、しらかば行政書士法人までお問い合わせ下さい。
次回は「医療法人設立のメリット・デメリット~今さら聞けない・・・医療法人設立のメリットデメリット」について配信します。
- 著者:
藤井孝先 しらかば行政書士法人代表。
2005年3月の開設以来、医療法人設立をメインに運営しており認可率100%を誇ります。医療法人専門の同業事務所ができないと放り投げた案件が持ち込まれることもあります。
【事務所概要】
事務所名:しらかば行政書士法人・しらかば不動産鑑定
開設年月日:2005年3月
所在地:〒164-0001 東京都中野区中野4丁目1番1号中野サンプラザ9階
事業内容:医療法人設立、診療所開設などの医療業務、相続・生前対策業務、不動産鑑定業
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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