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今さら聞けない・・・医療法人設立のメリット・デメリット【行政書士が解説】

今さら聞けない・・・医療法人設立のメリット・デメリット【行政書士が解説】

画像はイメージです。

医療法人の設立のメリット・デメリットを行政書士が解説します。

前回の医療法人設立のベストタイミングに続いて、今回は医療法人設立のメリットとデメリットについてのコラムです。

医療法人設立のメリット

医療法人を設立するドクターは、1.税金対策、2.分院展開、3.事業承継が主な動機ですが、医療法人設立にいたったメリットがあるということでもあります。

分院展開が可能になります

個人の開業医は1つのクリニックでしか管理者になれませんので、分院を開設することはできませんが、医療法人だと分院長を管理者に任命して複数の診療所を開設することができます。

分院開設というと、積極的に広く展開するイメージがあるかもしれません。そうした医療法人だけでなく、本院だけでは増加した患者さまに対応できなくなった場合に、本院を拡張や移転するのではなく、すぐ近くの建物に分院を開設するケースもよくあります。

分院展開だけではなく、医療法人設立後に、今後ますますの需要拡大が期待される有料老人ホームやサービス付き高齢者賃貸住宅いわゆるサ高住などの介護・福祉分野へ参入する医療法人もあります。

介護サービス参入により、高齢者に対する医療、リハビリから介護、看取りへと継続的なサービス提供が可能となり、患者様からの信頼感向上も期待出来ます。

たとえば、訪問看護や通所リハビリテーション(デイケア)だけではなく、ケアマネージャーを確保すれば、ケアプランを作成する居宅介護支援事業を併設して介護事業参入の機会も得られます。

その他に、整形外科医院が整骨院を開設したり、歯科医院が歯科技工所を開設したり、隣接分野へ展開して一体経営することもできます。

税制面でのメリットがあります

税制面でのメリットは次の通りです。

法人と個人事業の税率の違いを活用する

個人の所得税・住民税の税率が最高約56%なのに対し、法人の税率が約34%と差があるのでうまく利用すればメリットが得られます。

たとえば医療機器購入など設備投資を自己資金でまかなう場合、個人開業の場合は税引き後の手取り44%の資金積立から支払うことになりますが、医療法人で剰余金を積み立てて設備投資を行う場合には、税引き後の約64%の資金で設備投資を行うことができます。

借入金の返済資金についても同様です。

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個人開設にはない給与所得控除

院長の所得は医療法人からの給与になりますので給与所得控除が適用されます。

1,000~1,500万円の給与所得控除額:収入金額×5%+170万円
1,500万円超の給与所得控除額:245万円(上限)

所得を分散させて家計全体の手取りアップ

個人開業の場合には家族への給与は専従者給与として金額が少額しか経費に計上することができませんが、法人設立後には配偶者や後継者等を役員に選任して役員報酬として給与を支給できます。院長個人の高い税率部分の所得を家族へ分散することができるため家計全体としての手取りを増やすことができます。

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退職金のメリット

個人では受け取れない退職金ですが、医療法人を設立すると、勇退時に退職金を受け取ることができますので、リタイヤ後の生活設計が安定します。

所得税では退職金は通常の給与と区分され、税制面で優遇されています。

今さら聞けない・・・医療法人設立のメリット・デメリット【行政書士が解説】

このように退職金で受け取ると、毎年の役員報酬で受け取るより所得税・住民税が大幅に軽減できます。医療法人は利益金の配当が禁止されていますが、医療法人に残った利益剰余金を退職金支払時に取り崩すことは、妥当な範囲であれば、経費として認められます。

退職金の目安:最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(1~3倍)

新たに設立する医療法人は、解散時に残余財産がある場合には国庫等に帰属することになっています。もし後継者が見つからず理事長の勇退と同時に医療法人を解散することになった場合は、役員退職金支払い後の残余財産がいくらになるかがポイントとなります。
計画的に生命保険等の商品をうまく活用しながら積立を行うことをおすすめします。

現物資産の現金化

医療法人に基金拠出した現物資産は現金で基金拠出者(ドクター)に返還することができます。

今さら聞けない・・・医療法人設立のメリット・デメリット【行政書士が解説】

医療法人には、運転資金として現預金のほかに、建物内装設備や医療機器、敷金・保証金を基金として現物拠出することができます。

基金拠出をした場合には、医療法人に対して基金の返還を請求することができます。

基金の返還を請求した場合には、医療法人からは拠出した基金の金額が現金で返還されます。

理事長個人からみると、基金として現物拠出した建物内装設備や医療機器、敷金・保証金が医療法人への基金返還請求によって、現金化されるという見方をすることもできます。

事業承継対策や相続対策になる

現在の制度では、新たに設立する医療法人はいくら基金を拠出しても持ち分がありません。

医療法人に運転資金を拠出したり、内装設備や医療機器等を基金として現物拠出したとしても、貸付をしたようなもので、医療法人に利益の積立があったとしても、拠出した基金相当額を超えて、持ち分に応じた割合で積立分の払い戻しをするように請求はできません。

たとえば、理事長ひとりが1,000万円を基金拠出して医療法人を設立した後に、1億円の利益の積立があるとしても医療法人は1,000万円だけの返還義務しかないということになります。

個人開設のままだと、後継者が決まって引き継ぐまでのクリニックの利益が院長個人の現預金等の資産として積み上がっていってしまい、多額の相続税が発生してしまいます。
医療法人を設立した後の医療法人に積み上がった利益は、院長個人の資産ではなく、相続税が発生しない為、後継者がスムーズに事業承継することができます。

医療法人設立のデメリット

医療法人設立にはメリットばかりでなくデメリットももちろんあります。

利益金の配当が禁止されます

株式会社は株を持っていれば、会社の利益が上がった場合に持ち株数に応じて配当金を受け取ることができますが、医療法人は、いくら基金を拠出したとしても、それに応じた配当金を受け取ることができません。

よく質問を受けますが、医療法人が利益を出しすぎてはいけないということでも、利益に応じた役員報酬を受け取ってはならないということでもありません。

事務手続きが増加します

医療法人設立後はクリニックの開設者が法人になりますので、保健所や厚生局などに個人開設の廃止手続きと法人開設の開設手続きが必要となります。

ちなみに、厚生局の新規指導について心配されるドクターが多いですが、前に新規指導を受けた個人開設クリニックを法人開設にした場合には、新規指導はありません。

また、医療法人は設立後に定期的な届出が必要になります。

●毎年決算終了後3ヶ月以内に事業報告(都道府県か政令指定都市)
 資産の総額の登記~登記事項届

●最低2年に一度、役員選任の報告(再任の場合も必要です)
 役員変更届~変更登記~登記事項届

社会保険が強制加入になります

個人開設のクリニックは常勤従業員5人以上で健康保険や厚生年金など社会保険の強制加入ですが、医療法人の場合は院長も含め常勤の従業員は社会保険に加入しなければなりません。

ほどんどの場合には社会保険料の事業主負担が増えることになりますが、従業員採用のための福利厚生の充実という観点ではメリットにもなります。

なお、医師国保・歯科医師国保は継続して加入することができます。そのためには医療法人設立前の加入が必要です。多くのケースで、一般的な健康保険よりも保険料が有利ですので、当事務所でも検討をおすすめしています。

いかがだったでしょうか?
気になることがありましたら、無料相談も行っておりますので、しらかば行政書士法人までお問い合わせ下さい。

著者:
藤井孝先 しらかば行政書士法人代表。
2005年3月の開設以来、医療法人設立をメインに運営しており認可率100%を誇ります。医療法人専門の同業事務所ができないと放り投げた案件が持ち込まれることもあります。

【事務所概要】
事務所名:しらかば行政書士法人・しらかば不動産鑑定
開設年月日:2005年3月
所在地:〒164-0001 東京都中野区中野4丁目1番1号中野サンプラザ9階
事業内容:医療法人設立、診療所開設などの医療業務、相続・生前対策業務、不動産鑑定業
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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