ストレス社会の日本。なかでも医師は、人の健康・命を預かるというその性質上、高ストレスになりやすい職種…

※画像はイメージです/PIXTA
クリニックを開業するうえで、意外と見落としがちな重要項目に「ロゴデザイン」があります。ロゴは院長の想いを表現するだけでなく、患者の印象を左右する重要な要素のひとつです。そこで、デザインの傾向や費用の相場など、開業前に押さえておきたいロゴ制作のポイントについて、ロゴ専門デザイン会社、株式会社ビズアップの津久井将信代表取締役に伺いました。
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クリニックにおける「ロゴ」の役割とは
クリニックの開業にあたり、当初から「ロゴデザイン」を重視している医師は決して多くないでしょう。そもそもクリニックに「ロゴ」は必要なのでしょうか。
津久井氏によると、ロゴには「モチベーションや帰属意識を高める」、「会社・商品・サービスへの想いを知ってもらう」、「ビジュアル面でどのように統一感を出していけばよいか分かる」、「企業、店舗、商材の信頼度を高める」という4つの役割があるそうです。
そしてクリニックの場合は、来院を考えている患者の判断材料としても、ロゴが重要な役割を帯びているといいます。
津久井氏「受診したことがないクリニックがあった時に、患者さんが何を見て判断するかというと “見た目”が大きいウェイトを占めます。第一印象で『通ってもよさそうだな』と思ってもらえるかどうか。そのため、患者さんが最初に目にするロゴは非常に重要といえます」
デザインを考えるうえで、意識すべきは「ターゲット」と「エリア」。最適なデザインはターゲットによって異なるため、どのようなターゲットが多いエリアに開業するのかを踏まえてデザインを考える必要があるそうです。
津久井氏「たとえば、住宅街のなかのクリニックであれば、シンプルで親しみがある、柔らかいイメージのロゴを望まれるケースが多いですね。
かたや、銀座や麻布などのクリニックの場合、スタイリッシュで高級感のあるロゴが多い傾向にあります。ただ、住宅街でも、たとえば高級住宅街の場合は高級感のあるロゴが多くなります」
ロゴのデザインを決めるうえで、かつては広告会社が用意した既存のデザインから選択する形が主流でした。しかし、インターネットの登場以来、クリニックのロゴはバラエティ豊かになったと語る津久井氏。
各クリニックがロゴに力を入れ、差別化を図りづらくなっているいま、どのようにデザインを考えるべきなのでしょうか。
津久井氏「『具体的なモチーフがある』ことはポイントだと思います。たとえば、熊をロゴに用いた整骨院であれば『熊の整骨院』として認知されるメリットがあります。小児科ならば、親子を連想させるカンガルーなどですね。
親しみやすさから動物をロゴに採用するケースは多いです。クリニックと関係ない動物でも問題ありませんが、『歯科だからリス』というように、意味付けしているほうがより認知されやすいでしょう」
ロゴ制作費用の相場は?
クリニックのロゴを制作するうえで、デザインの傾向に加えて知っておきたいのが制作費用の相場です。そもそも、クリニックのロゴ制作の相場は、ほかの分野と違うのでしょうか。
津久井氏「クリニックのロゴとほかの企業ロゴとで作成プロセスが変わるわけではないので、基本的には料金も変わりません。ただ、たとえば内装業者がロゴ制作も請け負い、その業者がロゴ制作だけ外注するというケースは考えられるので、その場合はマージンが発生する可能性があります」
では、実際にクリニックのロゴデザインを制作するにあたって、どのぐらいのコストを想定すればよいのか。
ロゴ制作のプレーヤーは、大手広告代理店からインターネットを活用した専門企業までさまざまなため費用の幅は広いですが、津久井氏によると、一般的なクリニックの場合「10万円から50万円程度」をみておけばよい、といいます。
津久井氏「大手の広告代理店に依頼した場合、名刺や封筒などブランディングツール代も含めて1,000万円程度、中小企業の場合は50万円から100万円程度をみておくべきでしょう。一方、我々のようにインターネットを活用している場合は、営業コストがかからない分、低コストで制作できるメリットがあります。
当社の例でいうと、最適なデザイナーを選定するディレクターを置き、3パターンまで無料で提案させていただく形で、費用は10万円から。これは一例ですが、10万円から50万円程度みておけば満足度の高いロゴが作れると思います」
制作会社選びが重要…やってはいけないNGポイント
ロゴ制作は、まずは制作会社にコンタクトを取ることから始まりますが、ここでも押さえておきたいポイントが存在します。
津久井氏「重要なのは、しっかりと話を聞いてくれる会社を見つけること。きちんとヒアリングをしてもらい、それをもとに起こしてもらったデザインをチェックし、修正を重ね、完成に近づけていくというのが基本的な流れになります。
また、感性の合うデザイナーに担当してもらうことも大事なので、さまざまなデザイナーを抱えているかどうかも判断材料に入れておくといいでしょう。もしクライアントが具体的なデザインのイメージを持っている場合、制作会社は大抵ホームページに過去の実績を掲載しているので、参考にするとよいと思います」
制作会社を決める際には、「やってはいけないこと」もある、と津久井氏。
津久井氏「やってはいけないのは、知り合いに頼むこと。デザイナーとクライアントの感性の相性が悪いといくら頑張っても納得のいくロゴはできませんが、知り合いに頼んだ場合、気に入らないデザインが上がってきても断りづらいわけです。お金だけ払って、結局別の会社に依頼することになった……というのは実はよくある話なので、気をつけたいところですね」
そしてロゴデザインが決まったあと、可能ならばしておきたいのが商標登録です。
津久井氏「クリニックの場合は商標登録までされない方が多いですが、そのクリニックが使っているロゴを別の人が商標登録してしまうと、使えなくなってしまいます。そういう事例はあまり多くはないと思いますが、万一に備えて“保険”として登録しておくといいでしょう」
ロゴは、院長の想いを一目で伝えることができる大切なツール。患者の印象を左右する重要な要素でもあるため、クリニック開業の際は、今回解説したポイントを意識して“理想のロゴ”制作に取り組んでみてはいかがでしょうか。
- 著者:
〈取材協力〉
津久井 将信 株式会社ビズアップ代表取締役(編集:幻冬舎ゴールドオンライン)
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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