企業の人手不足が問題となっている昨今、承継者不足による事業承継問題が深刻化しています。クリニックも同…

※画像はイメージです/PIXTA
企業の人手不足が問題となっている昨今、承継者不足による事業承継問題が深刻化しています。クリニックも同様に、開業医の約53%が60歳を超えるなか、そのうちの半数は承継者が不在。加えて、開業医が都市部に集中していることで、地方医療の担い手が不足するという事態も起きています。今回はクリニックにおける事業承継と地域差の実態と、その対策について、先進自治体の活動事例を交えてみていきましょう。
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「事業承継」と「地域特性」の関係性とは
近年、全国の中小企業において承継者不足を理由とした事業承継問題が増加しています。クリニックも例外ではなく、厚生労働省の令和4年統計調査によれば、開業医の平均年齢は60.4歳と過去最高となるなか、一般的にリタイアを意識し始める60歳以上の割合が52.7%と全体の半数を超えました。さらには、このうちの約半数は承継者が不在であると推測されています。
この問題をさらに複雑にしているのが、開業医の地域偏在問題です。医療の現場では、平成16年の新医師臨床研修制度により、研修医が自由に病院を選択できるようになりました。これにより、都市部の高度医療機関での研修を希望する流れが加速した結果、医師の数は減少していないにもかかわらず、地方では地域医療の担い手が不足するという事態に陥っています。
それはクリニックの開業数においても同様です。開業後の業績予想が比較的しやすいという営業面の観点から、開業は人口が高密度に集積する都市部に偏りが見られます。これは事業承継を考える際にも同様であり、出口として第三者譲渡を検討した際に、譲受希望者が都市部のクリニックに集中するという事象が頻発しているのです。
地域の人口動態や人材雇用の容易さなどを考慮すれば、一定の理解はできます。しかし、地方の地域住民の健康を鑑みると深刻な問題であるといえるでしょう。
■「地方開業=悪手」ではない
地方で開業すること、特に承継開業することならではのメリットも存在します。傾向として競合先が少なく、確固たる患者基盤を有することから、業績の安定推移が期待できるでしょう。
また、近年では物価・資材高騰を背景に開業コストが増大基調にある一方、承継開業であれば投資額の抑制が期待できます。総じて開業リスクを減少させることにつながるでしょう。
自治体による「地域密着の承継支援」例
中小企業庁では、平成29年から早期・計画的な事業承継に対する経営者の気付きを促すことを目的に、都道府県の商工会や金融機関等の様々な機関が連携して、中小企業の事業承継を支援する「事業承継ネットワーク」という仕組みを構築しました。
全国47都道府県に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」では、親族内承継・第三者承継を問わず、支援ニーズの掘り起こしからニーズに応じた支援までをワンストップで実施しています。令和5年度には相談件数が約23,722件、成約件数が3,581件と過去最高を記録しました。これらの件数は今後さらに増加するでしょう。
また、医業の分野でも事業承継を後押しする仕組みづくりが進んでいます。
■深刻な少子高齢化・人口減少に悩む秋田県の取組
少子高齢化・人口減少が全国トップクラスの秋田県では、令和3年7月より自治体と秋田県医師会が連携し、開業を希望する医師に閉院予定の診療所をマッチングする専用のホームページ「あきた医業承継支援~医をつなぐサイト~」※1 の運用を開始しました。
また同時期に、過去にクリニックから地元の金融機関窓口へ相談したことをきっかけに承継につながった経験から、秋田医師会と秋田銀行は医業承継について連携協定を結んでいます。この取り組みは実際に成約が生まれるなど、一定の成果が出てきているようです。
地方自治体によっては10年後にクリニック数が半減する地区が出てくると予測されるなど、厳しい将来見通しがなされています。しかし、だからこそ、今後も危機感を持った自治体や地区医師会等が支援に乗り出す事例は増加するものと予想されます。
次世代の地域医療を支える承継の未来像
高齢者数がほぼピークを迎える2040年を見据えて、厚生労働省は地域医療の将来像を示す新たな「地域医療構想」の案を公表しました。今後需要が高まる在宅医療への対応強化、入院に限らない医療体制の整備などが挙げられています。
これらに基づき、病院をはじめとした地域医療機関の連携、機能分化、再編が進むことになるでしょう。当然ながら、長期的にはこれらの動きに対応していく必要があります。
一方、目先の課題解決方法としては、第三者承継を当たり前の選択肢として常に検討し、早めの対策を心掛けることが重要になってきます。医師会が運営する医業承継マッチングサイトにしろ、M&A専門家を利用し検討するにしろ、医業承継問題は活動をしたから即座に解決するような単純なものではありません。
候補先の選定や条件交渉などを踏まえれば、短くても1年、通常であれば2年から3年程度の期間を要することが通例です。場合によっては候補先が見つからず、やむなく閉院を選択するケースも視野に入れておかなければなりません。そう考えると、意外にも検討の時間は少なく、日ごろから準備を進めておくことが重要となってきます。
「事業承継」と「地域特性」の問題は情報不足の面も否めません。正しい情報を収集し、それを適切に判断することが必要です。将来どのようにありたいのかを見据えつつ、自治体や医師会・M&A専門家等を活用し、メリット・デメリットを慎重に判断しましょう。
- 著者:
田畑 伸朗
株式会社船井総研あがたFAS
チーフコンサルタント
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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