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M&Aに関する注意喚起 ~ルシアン事件から学ぶM&Aの落とし穴と対策~【税理士が解説】

※画像はイメージです/PIXTA
医療機関にとってM&Aは、事業承継や事業の継続・発展を実現するための重要な選択肢の一つです。しかし、M&A市場が拡大する一方で、悪質なM&Aも存在し、トラブルが増加しているのが現状です。
本稿では、2021年に設立された投資会社ルシアンホールディングスが、多数の中小企業を買収した後に買収後の資金抜き(資産抜き)や連絡の途絶、経営者保証の問題などを引き起こした事件の概要とその手口を分析し、この事例を通して、M&Aにおける潜在的な落とし穴を明確にし、それを回避するための具体的な対策と注意点について解説します。
(日本クレアス税理士法人監修)
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1. ルシアン事件の概要と悪質な手口
ルシアン事件とは、2021年に設立された投資会社ルシアンホールディングスが、不動産、物流、エネルギーなど多岐にわたる分野で30社以上(報道では40社以上)の企業を買収し、M&A市場のトラブル増加を浮き彫りにした事件です。
ルシアンホールディングスが行った悪質なM&Aの手口は主に以下の通りです。
買収後の資金抜き(資産抜き)と連絡の途絶
買収後に資金を引き抜き、その後連絡を絶つ行為を繰り返しました。これにより、買収された企業は実質的に廃業に追い込まれ、清算費用すら捻出できないケースもありました。例えば、京都のアクシスや大阪の精密機械メーカーの事例が具体的に挙げられています。
経営者保証の問題
一部の元経営者は、株式譲渡時に経営者保証(経営者保証=中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって返済することを求められる)の譲り受け側への移行を想定していたにもかかわらず、実際には移行されず、多額の債務を背負わされる事態に陥りました。
2. M&Aにおける注意点
ルシアン事件のようなトラブルを避けるため、M&Aを検討する医療機関は以下の点に留意することが強く推奨されます。
早期判断の重要性
M&Aプロセスは数ヶ月から1年程度かかることが多いため、判断が遅れると選択肢が狭まる可能性があります。
秘密保持の徹底
M&Aに関する情報は極めて機密性が高く、情報漏洩はM&Aの頓挫だけでなく、事業継続に支障をきたす恐れがあるため、細心の注意が必要です。
信頼できる支援機関への相談と活用
事業承継・引継ぎ支援センター、M&A専門業者に加え、弁護士、公認会計士、税理士といった士業専門家の活用が特に重要です。
M&Aプロセスは数ヶ月から1年程度かかることが多いため、判断が遅れると選択肢が狭まる可能性があります。
秘密保持の徹底
M&Aに関する情報は極めて機密性が高く、情報漏洩はM&Aの頓挫だけでなく、事業継続に支障をきたす恐れがあるため、細心の注意が必要です。
信頼できる支援機関への相談と活用
事業承継・引継ぎ支援センター、M&A専門業者に加え、弁護士、公認会計士、税理士といった士業専門家の活用が特に重要です。
弁護士:契約書の内容確認、デューデリジェンス(DD)、経営者保証の解除交渉、M&A後のトラブル発生時の法的支援において不可欠
公認会計士・税理士:財務状況の正確な把握、企業価値評価、税務上の助言、財務DD・税務DDなどを担当
M&Aプラットフォーム:低コストでマッチング機会を提供しますが、マッチング後の複雑な手続きには専門家の支援が必要となることが一般的
3. 契約内容の徹底的な確認と交渉
ルシアン事件の被害事例から、M&A契約における以下の主要項目について、徹底的な確認と交渉が不可欠です。
手数料体系の透明性
仲介者・FAの手数料の種類(着手金、月額報酬、中間金、成功報酬)や算定基準、最低手数料の有無と金額を明確に確認し、複数の仲介業者を比較検討すること。仲介者には利益相反のリスクがあり、中立・公平な支援が求められます。
M&A後の経営者保証の解除または譲受側への移行
最終契約書に譲受側の義務として明確に位置づけ、解除・移行が確実に行われるようクロージング条件に盛り込むことも検討すべきです。
表明保証条項
契約締結時およびクロージング時における事実の真実性・正確性を保証する条項です。期間や責任上限が設定されていない場合、過大な責任を負うリスクがあるため、内容を十分に理解し、交渉することが重要です。表明保証保険の活用もリスク軽減策として考えられます。
クロージング後の支払い・手続き
譲渡対価の分割払いや役員退職慰労金の後払いなど、クロージング後の支払いは不履行のリスクを伴うため、慎重な検討と明確な契約内容が求められます。
最終契約後の支払い変動条項
アーンアウト条項(目標達成時の追加支払い)や株価調整条項など、後で支払い額が変動する可能性のある条項は、将来的な紛争のリスクがあるため、その条件や算定方法を明確にしておく必要があります。
専任条項・直接交渉制限条項・テール条項
これらの制約条項について、期間や対象範囲が合理的であるか確認し、安易に同意しないように注意が必要です。
仲介者・FAの手数料の種類(着手金、月額報酬、中間金、成功報酬)や算定基準、最低手数料の有無と金額を明確に確認し、複数の仲介業者を比較検討すること。仲介者には利益相反のリスクがあり、中立・公平な支援が求められます。
M&A後の経営者保証の解除または譲受側への移行
最終契約書に譲受側の義務として明確に位置づけ、解除・移行が確実に行われるようクロージング条件に盛り込むことも検討すべきです。
表明保証条項
契約締結時およびクロージング時における事実の真実性・正確性を保証する条項です。期間や責任上限が設定されていない場合、過大な責任を負うリスクがあるため、内容を十分に理解し、交渉することが重要です。表明保証保険の活用もリスク軽減策として考えられます。
クロージング後の支払い・手続き
譲渡対価の分割払いや役員退職慰労金の後払いなど、クロージング後の支払いは不履行のリスクを伴うため、慎重な検討と明確な契約内容が求められます。
最終契約後の支払い変動条項
アーンアウト条項(目標達成時の追加支払い)や株価調整条項など、後で支払い額が変動する可能性のある条項は、将来的な紛争のリスクがあるため、その条件や算定方法を明確にしておく必要があります。
専任条項・直接交渉制限条項・テール条項
これらの制約条項について、期間や対象範囲が合理的であるか確認し、安易に同意しないように注意が必要です。
4. デューデリジェンス(DD)の実施
譲受側は、譲渡側の財務、法務、事業の実態を調査するデューデリジェンス(DD)を実施し、潜在的なリスクを特定し、譲渡対価の精査やM&A後のトラブル防止に役立てます。譲渡側もDDへの協力と正確な情報開示が重要であり、DDが不十分な場合、後で表明保証責任などの負担が増加する可能性があります。仲介者がDDを直接実施すべきではない場合がある点にも留意が必要です。
5. おわりに
M&Aは、医療機関や各種企業にとって事業承継の重要な選択肢であり、適切に進められれば事業の継続や発展に繋がる可能性を秘めています。しかし、本稿で詳述したルシアン事件のように、悪質なM&Aも存在し、その被害は甚大となることがあります 。
M&Aを検討する医療機関の皆様は、信頼できる支援機関や専門家の助言を積極的に活用し、契約内容を十分に理解した上で、慎重に進めることが肝要です。十分な理解と専門家との連携をもってM&Aに臨むことで、安全かつ望ましい形で事業の未来を切り拓くことができるでしょう。
- 著者:
日本クレアス税理士法人
執行役員/中川 義敬 税理士(近畿税理士会所属)
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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