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医業承継に係る費用・相場はどのくらい? 知っておきたい費用感【税理士が解説】

医院の承継に係る費用(承継価格)は譲渡側にとっては引退後の豊かな生活資金のため、譲受側にとってはできる限り開業資金を抑えるためにより低くと、双方にとって非常に重要な関心事項です。今回は医院の事業承継でかかる大きな費用とその相場について、日本クレアス税理士法人/執行役員の中川 義敬税理士が解説します。
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【1】譲渡価格はどうやってきまる?
一般的な譲渡価格の価値評価に用いられる手法として、年倍法、DCF法、類似会社比準法等、様々な考え方がありますが、それぞれメリット・デメリットがあり、事業の内容や状況に合った手法で考えなくてはなりません。
その中でも、クリニックの評価においては年倍法が用いられることが多く、年倍法とは中小企業庁のガイドラインにも紹介されている手法で、時価純資産に営業権(のれん)を加算した金額で算定する方法です。
「時価純資産」とは、資産の時価総額から負債の時価総額を控除した金額ですが、個人のクリニック・病院の場合には、時価資産のみで負債は譲渡されない場合もあります。「営業権」は医業における利益を元に数か月~数年分を乗じて計算するもので、一般的には3~5年が相場だと言われております。
この3~5年の根拠としては現在の利益が将来的に見込める場合に評価できるものであり、クリニックの承継においては、計算の根拠となる利益(売上)の大きな要素としてドクターの力量によるところも多い為、譲渡後にこれまでのドクターが勤務されない等の場合、将来の売上の予想が難しく、営業権は殆ど評価されない事例もあります。
どのようなケースであっても、これらの方法で算定した金額は目安に過ぎず、最終的には売り手・買い手の合意によって双方が納得できる金額を交渉することで決定します。
【2】手数料の内訳は?
医院の承継時に発生する大きな費用として、仲介会社やアドバイザリー会社といった専門家に支払う手数料があります。ここでの手数料には着手金・月額報酬・中間報酬・成功報酬があります。どの費用が含まれているかは会社によって異なるため、事前の確認が必要です。
一番大きな割合を占める成功報酬は、M&Aが成立した場合に、仲介会社などに支払う費用です。一般的な計算方法として、譲渡対価に応じた報酬料率を乗じるレーマン方式(図を参照)があります。手数料率が定められていても、最低報酬額が設定されている場合もありますので注意が必要です。

※数値は目安です
【3】買収監査(デューデリジェンス、DD)は必要?
買収監査は財務・法務などの各種リスクを事前に洗い出すために買い手の費用負担で任意に行うものです。買収監査を行うことで、譲渡対象医院の価値とリスクを把握し、譲渡価格に反映することができます。
買収監査には高い専門性が求められるため、費用は少なくとも数十万円から、複雑なものになると数百万円となる場合もあります。そのため比較的規模が小さい医院においは、簡易的な買収監査を行うことや、買収監査自体を行わないこともあります。
【まとめ】売り手も買い手も、医業に強い専門家に相談しよう
今回は事業承継にかかる費用について紹介いたしました。医院の事業承継は売り手にとっては引退後の生活資金、買い手にとっては開業費が低く抑えられることなどメリットがあります。
しかし、譲渡価格や費用の他に手続き面でも複雑な点が多くあります。適切なサポートを受けられるよう、医業の事業承継に強い専門家に相談されることをお勧めいたします。
- 著者:
日本クレアス税理士法人
執行役員/中川 義敬 税理士(近畿税理士会所属)
【経歴】2007年税理士登録、2009年に日本クレアス税理士法人入社。
現在に至るまで、東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。
医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院までをサポートしてきた医療分野での高い経験を生かすため、2019年7月大阪本部 本部長に就任。現在に至る。
- 提供:
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