開業医の高齢化や世代交代が進む中で、特に地方の地域医療はもちろんとして「医業承継」(医療事業承継)が…
開業資金を大幅削減!第三者承継でクリニックを引き継ぐ方法とは?【税理士が解説】

※画像はイメージです/PIXTA
開業をお考えになる先生にとって、開業資金は気になるところではないでしょうか?診療科目等によるものの、おおよそ5,000万円から1億円ほどの費用がかかると言われています。また開業場所の選定やスタッフの採用と教育、集患対策など先生の時間や労力は多大なものです。一方、現在、医療機関の経営者の半数が60歳以上となり高齢化が進んでいますが、ほとんどの医療機関では後継者が不在でクリニックの継続が危ぶまれています。開業したい先生とクリニック継続を願う先生のニーズを解決する方法として『第三者承継』があります。第三者承継は、新規開業をすることにより開業資金や様々な労力を削減出来ることもあり、近年では第三者承継での新規開業が増えてきています。
そこで今回は承継医院をどうやって見つければよいのか、そして承継医院を決めるポイントについて、日本クレアス税理士法人/執行役員の中川 義敬税理士が解説します。
【1】第三者承継するためには
第三者承継をするならどこでも良いわけではありません。たくさんの候補から選びますので、先生が第一にやらなければならないのは『開業する目的を明確にする』ことです。
『どうして開業したいのか』『どのような診療を行いたいのか』など診療方針が明確になると他の条件も自然と明確になってきます。診療したい場所やクリニックの広さ、スタッフの条件などです。先生の開業したい医院の条件が明確になると承継したいクリニックの条件が絞れてくるのです。
【2】第三者承継案件を選ぶポイント
先生の希望条件に合った診療所が見つかれば、次は内容を確認する必要があります。
①クリニックのキャッシュフローが良好であるか
② 将来の診療圏内の人口の推移(患者数を将来維持できるのか、減少するのか)
③ クリニックの借入金の有無
④ 地域でのクリニックの評判
⑤ 診療圏内の競合医院の有無
複数の候補がある場合には、内容を確認してより条件の良いクリニックを選ぶ必要があります。
【3】第三者承継のメリット
最も大きなメリットは開業費用を抑えられることです。冒頭で開業費用はおおよそ5,000万円から1億円ほどと書きましたが、第三者承継では新規開業と比べてほとんどの場合、開業費を抑えられます。次にクリニックのスタッフを引継げば人材採用や人材教育の労力を軽減できます。クリニックの既存患者も引継げるので開業時から収入が見込めます。開業時の借入金を少なくし、最初からある程度の収入が発生するため安定した経営が見込めるということです。
【4】第三者承継の流れ
先生が第三者承継の診療所を探しはじめてもすぐに見つかるわけではありません。
そんなときは、M&A専門の仲介業者や税理士事務所、銀行などに相談してみてはいかがでしょうか。幅広く情報収集して、先生が承継したいと思うクリニックをぜひ見つけて下さい。

開業までの期間は開業の目的を明確にしてからおおよそ1年ほどかかります。
おわりに
最後に第三者承継のデメリットについてお伝えします。
開業資金を抑えられ、既存の患者やスタッフ、医療機器も引継いで開業できたとします。しかし、既存の患者の2割から3割は離れていく可能性がありますし、スタッフも新しい院長と合わないからと退職されるかもしれません。医療機器も買い替える必要が出てきます。
既存の患者やスタッフを失わないためにも、売り手側のクリニックの院長と、クリニックの経営方針・理念についてよく話し合って下さい。新規開業を成功させるためには患者に対する対応や一緒に働くスタッフとの信頼など第三者承継でモノとヒトをしっかり引継ぐ必要があります。
第三者承継の手続きは先生おひとりでは大変ですので、ぜひ医療分野の事業承継に強い専門家にご相談下さい。
- 著者:
日本クレアス税理士法人
執行役員/中川 義敬 税理士(近畿税理士会所属)
【経歴】2007年税理士登録、2009年に日本クレアス税理士法人入社。
現在に至るまで、東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。
医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院までをサポートしてきた医療分野での高い経験を生かすため、2019年7月大阪本部 本部長に就任。現在に至る。
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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