2025年、いわゆる“団塊の世代”が全員75歳以上の後期高齢者となるなど、少子高齢化が深刻化する日本…

※画像はイメージです/PIXTA
2025年、いわゆる“団塊の世代”が全員75歳以上の後期高齢者となるなど、少子高齢化が深刻化する日本。医療が必要な高齢者の数も増加が予想されるなか、国の「保険料見直し」により高齢患者の受診控えが進む可能性が指摘されています。こうしたなか、安定したクリニック経営と診療を続けるためにどのような対策が必要となるのでしょうか。株式会社船井総合研究所医療支援部の伊佐常紀氏が解説します。
※本コラムの内容は2025年3月執筆時点での情報に基づきます
▶「MedicalLIVES」メルマガ会員登録はこちらから
日々の診療に役立つコラム記事や、新着のクリニック開業物件情報・事業承継情報など、定期配信する医療機関向けメールマガジンです。メルマガ会員登録の特典として、シャープファイナンスのサポート内容を掲載した事例集「MedicalLIVES Support Program」を無料進呈!
2025年、高齢者の「医療費負担」が増える見込み
1947年~1950年生まれの「団塊の世代」は、2025年に全員が75歳を迎え、後期高齢者となります。
医療費は今後、より増大することが予想される一方で、少子化により医療保険料を負担する現役労働世代の減少が懸念されています。
この点、厚生労働省は「すべての国民が、年齢に関わりなく、その負担能力に応じて医療保険制度を公平に支え合うこと」を目指しています※。そのため、こうした状況を受けて、所得が比較的高い高齢者を中心に間接的、ならびに直接的に医療費の自己負担が増加する可能性があるのです。
※出典:厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」
今回は、そんな後期高齢者を中心とした患者の受療動向に影響を与えうる「令和7年度の保険料の見直し」に焦点を当て、クリニックに与える影響と対策について解説します。
「医療費負担増」の可能性がある制度の見直し
現在、施行および検討されている制度の見直しは主に下記の3つが挙げられます。
1.「後期高齢者医療制度」保険料上限額の引き上げ【施行】
75歳以上の「後期高齢者医療制度」の被保険者を対象に、保険料の年間上限額が段階的に引き上げられます。令和6年度は73万円でしたが、令和7年度は80万円となります。
なお、年収約1,000万円を超える方が対象です。
2.「外来特例」自己負担限度額を5~15%引き上げ【検討】
70歳以上の高齢者に対し、外来医療費の自己負担に上限を設けている「外来特例」の見直しが検討されています。
厚生労働省は、70歳未満で年収約370万~770万円、70歳以上で年収約156万円~370万円の人を対象に、自己負担限度額を5~15%引き上げる試算を提示しています。
3.「高額療養費制度」高所得者層の自己負担限度額引き上げ【検討】
高額な医療費がかかった場合に、自己負担限度額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」も見直される可能性があります。厚生労働省は、高所得者層の自己負担限度額を引き上げる方向で検討を進めています。
「外来特例」見直しで、受診控えが増加する可能性も
特に「外来特例」の見直しは、上述した制度のなかでも多くの高齢者患者に当てはまり、かつ直接的な自己負担額の増加であることから、クリニックへの影響が最も大きい制度の見直しといえるでしょう。実際、厚生労働省の資料によると、外来の月額上限(月間1万8,000円または8,000円)に該当する患者の割合は、70~74歳で17.9%~53.9%、75歳以上で8.2%~33.4%と公表されています(※1、※2)。
これは経済状況の厳しい高齢者にとって、受診を控える、あるいは通院頻度を減らすという選択につながる可能性があります。実際、2022年10月、後期高齢者医療制度において一定以上の所得がある高齢者の窓口負担が1割から2割に引き上げられた際に、一時的に受診控えやクリニックへの問い合わせが増加したケースがみられました。
受診控えは、「少し調子が悪いだけ」「このくらいなら我慢できる」といった考えから、病気の早期発見・早期治療を遅らせ、症状が悪化してから受診する可能性を高めるため、クリニック経営の収益性のみならず、医学的な観点からも避けたい事象です。
※1 出典:厚生労働省「第187回社会保障審議会医療保険部会【資料2】医療保険制度改革について」
※2 所得による分類によって、該当する患者の割合は異なる
「受診控え」に備える…クリニックに必要な3つの対策
保険制度が毎年見直される状況下において、クリニックが安定した経営を維持し、患者に適切な医療を提供し続けることは容易ではありません。まずは今年の法改正への対策をとるとともに、3~5年の中長期的な対策を考えることが重要です。
令和7年度の保険料見直しへの対策としては、下記の3点が挙げられます。
1.高齢者に頼らない、幅広い世代への集患
小児科などの科目特性によっては難しい場合もありますが、高齢者以外の世代への集患力を強化することで、患者層の偏りを解消し、リスクを分散することができます。特に、ホームページを充実させる、SNSなどを活用した情報発信を積極的に行う、WEB上のクチコミ対策を強化するなど「広報」に注力することが重要になってきます。
2.再診を促す工夫(通院継続の支援)
病状の経過観察や治療の継続が重要な患者に対しては、定期的な通院を促すための工夫が必要です。はがきやSNSを用いたリコールシステムや予約システムの導入を行ったり、来院時に次回来院の目安を明確に伝えたりと、患者の通院継続を支援するといいでしょう。
3.スタッフ教育および丁寧な情報提供
令和7年度の保険料見直しの内容や影響については、患者にわかりやすく説明する必要があります。適切な受診の重要性などを丁寧に伝え、患者の不安解消に努めましょう。
また、一時的にクリニックへの問い合わせが増えることも予想されます。したがって、スタッフ全員が制度変更の内容を正しく理解し、患者からの質問に適切に答えられるよう、勉強会などの実施も必要かもしれません。ただし、先述したように、もっとも重要なのは中長期的な視点だと考えます。毎年の保険料見直しに左右されない経営が理想です。
2022年10月の一部高齢者の窓口負担引き上げの際に、あまり影響を受けなかった医院があります。それは「地域で一番の医院」です。患者は“価格”よりも“質の高い医療サービス”に価値を感じます。安定した経営基盤を築くためには、こうした「地域で一番の医院」を目指し、患者満足度の向上に継続的に取り組む必要があるでしょう。
令和7年度の保険料見直しのみならず、常に最新の情報に目を向け、変化に対応できる柔軟な経営体制を構築していくことが、クリニックの持続的な成長に不可欠です。
<参考・出典>
・厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について
・厚生労働省「令和7年度予算案の概要」
・厚生労働省「第189回社会保障審議会医療保険部会【資料2】医療保険制度改革について」(PDF)
・厚生労働省「第187回社会保障審議会医療保険部会【資料2】医療保険制度改革について」(PDF)
- 著者:
伊佐 常紀(いさ・つねのり)
株式会社船井総合研究所
医療支援部 整形外科グループ 整形外科チーム_2リーダー
(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
記事紹介 more
セクハラやパワハラなど、ハラスメントに対する世間の目が厳しくなっている昨今。業界問わず、こうした問題…
都市部からアクセスのよい有名温泉はどこも芋の子を洗う混雑&近年は内容に見合わぬ高値で食指が動かない。…
大手企業がランサムウェア攻撃を受け、機密情報が盗まれるニュースが頻繁に報道されていますが、これらはテ…
日本には、例えば山椒、紫蘇、柚子、そしてショウガなど古くから特有の香辛料≒スパイスがありますが、これ…
近年、経営者の高齢化や後継者難などを背景に増加している「M&A」について、この流れは医療業界でも広が…
Leo & Luna (レオエルナ)は、イタリアはミラノにて高品質なペットベッドを作り続けるブランド…
医師が独立開業に踏み切る理由はさまざまですが、なかでも「もっと稼ぎたい」という理由から独立する人は少…
東京都、千葉県、神奈川県の3つの都道府県に面した広大な東京湾。(湾内には70以上の人口島があり、多く…