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※画像はイメージです/PIXTA
医業に係る所得金額の計算は、医科・歯科の事業所得の収入金額を、「社会保険診療報酬」、「自由診療報酬等」、「雑収入(その他の収入)」の3つに分けて計算します。
所得計算は、収入金額から必要経費を差し引いて計算を行いますが、社会保険診療報酬の必要経費については、実際にかかった経費ではなく、租税特別措置法26条の適用により“概算経費”で計上することが認められています。この制度の正式名称を「社会保険診療報酬の所得計算の特例(措置法26条)」といいます。
今回はこの「社会保険診療報酬の所得計算の特例」の特例計算について解説します。(日本クレアス税理士法人監修)
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社会保険診療報酬の所得計算の特例
この制度は、年間の社会保険診療報酬の収入金額が5,000万円以下の医師または歯科医師が社会保険診療報酬に係る必要経費を“概算経費”で計算して確定申告することができるものです。
「実際にかかった必要経費(実額経費)」が概算経費より多い場合は、実額経費を必要経費として確定申告を行うことも可能です。確定申告を行うときは、実務上は概算経費と実額経費のいずれか有利な方を選択します。
概算経費の計算は「1年間の社会保険診療報酬の額×概算経費率」で行います。概算経費率は国が定めていて、下記の4段階に分かれています。
特例計算の概算経費率表
社会保険診療報酬の額(A) | 必要経費の額 |
---|---|
2,500万円以下 | (A) × 72% |
2,500万円超、3,000万円以下 | (A) × 70% + 50万円 |
3,000万円超、4,000万円以下 | (A) × 62% + 290万円 |
4,000万円超、5,000万円以下 | (A) × 57% + 490万円 |
この制度の適用が可能かどうかは 1年ごとに判定を行い、次の場合は、対象外となります。
・社会保険診療報酬の額が5,000万円を超える場合
・医業等の収入の合計額(保険診療+自由診療)が7,000万円を超える場合
自由診療報酬等(社会保険診療報酬以外の収入)の所得計算
自由診療報酬等の所得計算には、概算経費の特例計算を使うことはできません。所得計算は、収入金額から必要経費を差し引いて計算を行う「実額」となります。
自由診療報酬等に該当するものには、労災保険診療、自賠責保険診療、母子保健診療、健康診断料、メタルボンド、金属床義歯、一般的な歯科矯正、診断書作成料、貸与寝具料、テレビ等の使用料、自動販売機収入、医薬品等の仕入割戻などがあります。
個人開業医の場合の比較事例
特例計算の場合と実額で計算した場合の所得税額を比較してみましょう。
【事例】
社会保険診療報酬:3,500万円
実際経費:1,500万円
特例計算を行う場合は、上記の表から次のように社会保険診療報酬に係る概算経費を計算します。
3,500万円×62%+290万円=2,460万円
特例計算での所得金額は 1,040万円(3,500万円-2,460万円)となります。これに対して実額での所得金額は2,000万円(3,500万円-1,500万円)になります。
税額を概算してみると、特例計算の場合は所得税率33%で税額は約190万円、実額の場合は所得税率40%で税額は約520万円となり、特例計算を選択すると約330万円の節税につながります。
おわりに
社会保険診療報酬が5,000万円以下かつ保険診療+自由診療の合計額が7,000万円以下の場合、社会保険診療報酬に係る経費を実際の経費でなく概算経費で計上できます。
高い節税効果が期待できる優遇税制ですが、実額・特例計算のどちらの適用を受ける方がより節税につながるかは、ケースにより異なりますので、税理士などの専門家にご相談のうえ、選択を行うことをお勧めいたします。
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