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【医師が解説】タスクを重要度と緊急度によって分類…クリニックにおける「時間管理マトリックス」活用法

【医師が解説】タスクを重要度と緊急度によって分類…クリニックにおける「時間管理マトリックス」活用法

※画像はイメージです

多忙を極める現代人にとって、優先度・緊急性などを考えながら、物事の順番・配分をコントロールするスキルは必要不可欠。そこで今、注目されているのが「時間管理マトリックス」です。今回は、高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭氏が、医療機関における「時間管理マトリックス」活用法について筆者の体験とともに解説します。

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時間管理マトリックスとは、業務(タスク)に対して、緊急度と重要度の2つのベクトルを設けて分類するフレームワークで、自身のタスクを効率的に遂行するのに役立ちます。緊急度・重要度の2つの要素でそれぞれのタスクを分類するため「緊急度と重要度のマトリックス」とも呼ばれています。

ビジネスパーソンは、業務遂行のため既存のタスクに取り組む一方で、突発的に新たな業務が発生することも多々あります。このような場合、自身の抱えるすべてのタスクの取り組むべき順序や期間、優先度を把握した上で、新たな業務に着手するべきか否か判断する必要があります。そのため時間管理マトリックスは、ビジネススキルの基礎とも言えるでしょう。

この時間管理マトリックスは、経営コンサルタントでおなじみのスティーブン・R・コヴィー氏が著書『7つの習慣』のなかで提唱しました。この著作は、さまざまな成功者を観察し、共通した習慣を記載したものです。

時間管理マトリックスではタスクを緊急度の高低、重要度の高低によって4つの領域に分類します。

特に緊急度・重要度の高い内容として分類されるものは、迅速かつ網羅的に行動をしないといけません。その例として、役員会議など経営上重要な会議の準備、納期や締め切りが近いプロジェクトや顧客向けの資料作成、突発的なものでは、クレームなどのトラブル対応などが挙げられます。各領域でトップの見せる姿勢が組織運営においてはリーダーシップの要となります。

時間管理マトリックスをクリニック運営にどう活用していくか

クリニックにおいては、患者・家族の対応という医療の部分と、人事・請求業務・行政への対応からクレーム対応など管理業務に大別されます。ここでは、時間管理マトリックスを緊急度・重要度の2つのベクトルで、4つの領域に分けていきます。

第一領域:重要度・緊急度ともに「高」

医療機関においては、締め切りが迫っているタスクがこれに当てはまります。

たとえば新型コロナウイルス感染症が2類感染症であった時期では、突発的に受診した発熱患者や咳などの呼吸器患者の対応、院内で生じた新型コロナウイルスワクチンの接種後の状態悪化への対応、接種ミスなどの医療事故などが挙げられます。

新型コロナウイルス関連以外では、患者・家族からの理不尽なクレーム対応(待ち時間や診療内容、診療費に関して)、突発的なスタッフの欠勤による診療体制縮小への対応などが挙げられるでしょう。

私も2022年9月に新型コロナウイルスに罹患しました。その際、休診するにあたり予約患者さまの振替や行政への連絡など四苦八苦しました。

第二領域:重要度「高」緊急度「低」

採用面談や人事対応など組織作りに関する業務などが挙げられます。

クリニックは少ないスタッフで日常業務を運営しているため、採用面談や人事対応などの組織作りが経営の要となります。これに加えて、ミーティングなどでクリニックの長期的なビジョンの共有、組織の円滑な運営のためのスタッフとのコミュニケーション、他医療機関との連携による人脈作りなども挙げられます。

第三領域:重要度「低」緊急度「高」

対応しなければいけない電話、不要な外部との付き合いなどが該当します。院長を指名してきた電話が不動産投資や証券口座開設の勧誘だった、なんてこともあります。

第四領域:重要度・緊急度ともに「低」

こちらは業務というよりは、時間待ちなどが該当します。

クリニックの院長としてどう対処していくか

最後に、重要度の高い第一領域と第二領域に対する私なりの取り組み方を紹介しておきます。

第一領域に関しては即座に、スタッフの協力を仰ぎながら解決します。

たとえば、受診した患者さんが緊急に他院への紹介が必要なのか速やかに判断します。また、クレームに対して院長が自ら迅速に出ることで、事を荒立てないように配慮しています。

また、スタッフの突発的な病気や家庭の事情に関しては、診療時間や内容を縮小するなどの判断を早期に行い、他スタッフの心理的負荷を減少させ、医療事故を起こさないよう常日頃から努めています。

私が特に重視しているのは、第二領域(重要度「高」緊急度「低」)で、リーダーシップを示すことと、中長期的なビジョンを共有することです。

そのために最新の医療の状況や周辺の状況を掌握した上で、アップデートが多い医療知識・技術と関連する法律に関しては日々学習・情報収集を継続し、独りよがりにならないように努めています。これに加えて、スタッフの声を聴きながら、診療のスタイルに関して変更を行うことも重要です。

管理者がビジョンをもって組織作り、人脈作りを継続し、自らの品位を保ち続けることが、医療機関の経営・維持には必須です。そのため、自分自身が管理者として適切かどうか、自問自答するのみならず、他医療機関や医療関連でない方との日々の交流を継続することが必須と考えています。

著者:
武井 智昭
小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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