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「ママドクター」の実態…3児の子育てに奔走する40代・小児科医の苦悩と喜び、キャリア

「ママドクター」の実態…3児の子育てに奔走する40代・小児科医の苦悩と喜び、キャリア

※画像はイメージです/PIXTA

近年、仕事と子育てを両立する女性の割合が増加しています。2021年の国民生活基礎調査によると、18歳未満の子供がいる世帯において、実に4人に3人以上(75.9%)の母親が働いているそうです。そこで今回、医師のなかでも特に激務で有名な「小児科医」として働きながら3人の子どもを育てるママドクター、京都きづ川病院/きづ川クリニックの米田真紀子先生に、ママドクターならではの苦悩と喜び、キャリアについてお話を伺います。

小学生3児を育てながら一般病院勤務

現在は小学生3人の子どもを育てながら、一般病院で勤務しています。振り返ると、2歳差の3人が保育園に通っていた時代が今までで1番大変でした(それ以降はもっと違う意味で大変になっていくのですが…)。

医者として働きだしてから数年はまだまだ未熟で、勉強もしなければいけない反面、子育ても初心者で、やるべきことの取捨選択もできなかった時代。夫や祖父母の協力は適宜、得られていましたが、夫は基本帰宅が遅く、夜勤も多く、子どもの日常の予定管理はもっぱら自分が行っていました。

うっかり寝落ちしてしまうことも…

<標準的な一日のタイムスケジュール>

6時半 起床、朝食

8時前 自宅を出発 保育園への送迎

8時半~17時半 クリニックにて勤務

18時 保育園お迎え後帰宅 夕食の準備

18時半 夕食

19時半 入浴

20時 自由時間

21時 子どもを寝かし付け

22時以降 翌日の準備、洗濯、食事のストックの用意など

0時 就寝

こうして書きだしてみると、本当に毎日余裕がなくて、いつも時間に追われていました。特に退勤してお迎えまでは、道で信号ひとつ引っかかっても焦るくらいにカツカツだったので、退勤時間前後に仕事が舞い込んだときには非常に焦りました。幸い、同僚や先輩方に恵まれ、たくさん協力いただいて、なんとか毎日やりくりしていました。

家に帰ってからもまた大変で、おなかを空かせて不機嫌になっている子どもをあやしつつ、映像コンテンツの力を借りながら、最低限の食事を用意し、介助をして、合間に自分も食べたのか食べなかったのか分からないくらいの食事を済ませ、そのままお風呂になだれ込む、という流れでした。

基本的には食事は休日や、前日に作り置きしたものを出していましたが、子どもが複数になってからは、離乳食、好き嫌い等でその子によって食べるものが違うので、レトルトや冷凍食品も活用していました。

入浴後から就寝時までの小一時間は、絵本の読み聞かせや、その日あったことのお話など、スキンシップの時間にしていました。寝かし付け後も、夫と交代で数時間おきの夜泣き対応をしながら空き時間に家事を済ませる、といった具合でした。うっかり寝落ちしてしまったときには、夜中に洗濯機を回すことも度々ありました。みんなそうだと思いますが、自分の好きなようにできる時間は休日も含めてほとんどありませんでした。

時には体調不良者がでることも

大体はこのような感じで日常が過ぎていきましたが、これはあくまで子どもが全員健康だったときの場合。体調不良者が出ると、実質、隔離もできないことが多かったので、次々に子ども達に感染していくということもよくありました。

子どもの体調不良時には、「夫婦の仕事の優先度を考慮して休みやすいほうが休む」、または「○曜日はどちらが休む」などというルールを作り、病児保育も適宜利用していました。

子どもが病気になると、必然的に小児科医である自分が診断や治療方針などすべて責任を持つことになります。病気をたくさん知っている分、悪い病気じゃないかと考えてしまったり、自分の判断が合っているのか不安になったりして、逆に心配が大きくなってしまうこともありましたが、幸いなことに現時点までは特に入院や大きな病気もなく、過ごすことが出来ています。

ひとりの母として、小児科医として、「仕事」への向き合い方

小児科ということで、子どもの体調不良には寛容な職場だったことは大変助かりましたが、やはり中途半端にしか仕事ができない申し訳なさや、後ろめたさは常に感じていました(現在も感じています)。

特に、夜中に子どもの発熱に気づいたときは、翌日の仕事への影響、朝からの段取りを考えて、眠れないこともありました。

また、仕事中も保育園から電話がかかってきたときには、いつも不整脈が出るほど焦ります。できる限りの仕事を終えてからお迎えに急行したり、すぐに行けないときは代理の人に向かってもらう手筈を整えたりと、日々綱渡りでした。

いつ予期せぬ呼び出しがあるか分からないため、せめて自分が出勤している時間内には役に立とうと、他の人の手伝いや他の人が避ける仕事を率先してすること、できる仕事を後のばしにしないことを心がけました。

また、自分が急に抜けることがあっても周りの人が困らないように、今後の方針を明確にしてしっかり申し送りを行うようにしています。

当直などの夜勤を免除してもらい、遠方の学会参加にもなかなか行けなかったので、その分他の同僚より経験や知識が劣ってしまうことにも焦りを感じたこともあります。

仕事が思うようにできない時に…心にとどめておきたいこと

予期せぬことで仕事が思うようにできないときに、他人から悪意のある言葉をぶつけられることも残念ながらあります。そのときの自分に言いたいのは、「いつまでもこの状況が続くわけではないから、とにかく気にしないこと」。

とはいえ、まったく気にしないということは無理だと思いますが、その一時の悪意に心を割くこと自体が勿体ないことで、あえて「鈍感」になることも重要です。

自分がしてもらったことは、またフルで働けるようになってから、お世話になった先輩方、そして次世代の後輩たちに恩返ししていきたいと思っています。後ろめたさで「ごめんなさい」とばかり思うのではなく、感謝を忘れずにいることが大事です。

今は昔ほど子どもたちも病気をしなくなりましたが、やはりコロナ禍は自分だけでなく子どもの体調管理にもかなり神経を使いました。現在もドタバタその日暮らしの毎日は継続中ですが、子どもたちは日々の苦労を補って余りあるほどにかわいいですし、幸せをくれる存在です。

子育てを経験することで、小児科を受診するお父さんお母さんたちの気持ちにもより深く寄り添えるようになったと感じているので、大変なことはたくさんありますが、仕事を辞めずに両立の道を選んでよかったと思っています。

著者:
米田 真紀子
【京都きづ川病院/きづ川クリニック 小児科医 日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医】
1981年生まれ。平成19年滋賀医科大学医学部卒。同年4月より滋賀医科大学付属病院にて初期研修の後、同大学小児科学教室入局。平成23年より済生会滋賀県病院勤務の後、平成27年より京都きづ川病院勤務。その間、3人の子どもに恵まれ、育休・産休を取得しつつ、現在はその経験を生かして、患者とその家族の心に寄り添う診療を心がけている。一般診療から小児救急、新生児領域まで幅広い経験を有する。
(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)

提供:
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