医師をはじめとした医療従事者の“働きすぎ”が問題となっています。こうしたなか、国は今年4月から「医師…
※画像はイメージです/PIXTA
今回は、富士通Japan株式会社よりコラムを提供いただきました。富士通Japan株式会社は、「Fujitsu Healthcare Connective Place」というオウンドメディアを運営されています。
今回のコラムでは、「これで完璧、失敗しない電子カルテの選び方 -患者から選ばれるクリニックのための開業前準備-」と題してお届けします。電子カルテが世に出てから早20年が経過し、診療所の電子カルテの普及率は5割を超え、開業時に電子カルテを導入するのは当たり前の時代となりました。また、政府が進める医療DX政策は電子カルテありきで検討が進められており、電子カルテを導入しないという選択肢を選ぶのはなかなか難しい時代となっています。
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電子カルテ選定の流れや導入までのスケジュール
電子カルテの選定にあたっては、どのように進めていけば良いのでしょうか。検討開始時期は、一般的に「開業の半年前」と言われています。開業までに行うべき事項を時系列に解説します。
(1)情報収集
開業6か月前には、電子カルテに関する情報収集を始める必要があります。しかしながら、ただ闇雲にインターネットで調べるだけでは、有効な情報にたどり着くまでには時間も手間もかかってしまいます。そこで、複数の情報ソースを活用する必要があります。
インターネットで調べる場合、全体像を理解するには向いていますが、情報はメーカー側が売れるように絞ったものとなります。また、比較サイトもあくまで広告ベースで作られており、すべてを網羅しているわけではないので注意が必要です。
展示会で調べる場合では、操作性が確認できます。新型コロナも収束し、各地で開催が復活傾向にあります。各社のブースに訪れ説明を受けるとともに、少し触ってみると良いでしょう。
先輩・知人に聞くことは、導入後の対応を確認するのに向いています。お目当ての製品を実際に使っている先輩、知人がいれば是非見学に行くと良いでしょう。その際、医師の意見も重要ですが、事務や医療クラークの意見も聞けると良いでしょう。
(2)要望をまとめる
実際に購入した場合をイメージし、情報収集ができたならば、電子カルテを選ぶ際の要望をまとめておきます。これは比較軸を決めておくと言っても良いでしょう。基本は、自らが描く診療スタイルに合うものを選ぶというシンプルな考え方です。シンプルであるがゆえに、ある程度直感に依存しても良いと思われます。一方、最低限、電子カルテに求める機能は決めておくと良いでしょう
(3)メーカー選定・デモンストレーション
情報が集まり、電子カルテに関する要望がまとまったならば、メーカーからデモンストレーション(以下、デモ)を受けるステージに進みます。デモとはメーカーから商品説明を実際のシステムを用いて行ってもらうものです。注意点は、多くのメーカーからデモを受けると、頭が混乱して分からなくなることがあるため、できれば3社~5社程度にあらかじめ絞っておくと良いでしょう。
メーカーからデモを受ける際に、各社同じ内容で比較した方が分かりやすいので、(1)診療科および専門分野を伝え、(2)実際のカルテを用意したり、(3)診療ワークフローを事前に提示したりして、同条件でデモをお願いしてみてください。この準備自体で、メーカーの対応レベルが分かります。つまり、こちらの要望を理解し実現するための力があるかを確認できます。
また、デモを行うスタッフの上手いヘタで印象が変わるため、実際に自らも体験してください。
最後に、質問は必ず用意しておいてください。デモを受けたメーカーに同じ質問を投げかけることが重要ですので、書面で用意しておくと良いでしょう。
(4)見積比較
デモが終了し、自らが良いと感じたメーカーに、その場で見積もりを依頼してください。比較を行う際のポイントとしては「同一条件」で行うことです。同一条件とは、同じ端末数で使用した場合の価格を提示してもらうことです。また、見積書は大抵、初期費用は合計額、保守費用は月額と表示がバラバラですから、必ず月額にかかるコストに置き換えて考えると良いでしょう。
さらに、各社の見積もりがそろってきたら、それに基づき価格交渉を行います。価格交渉は購入者と販売者との駆け引きとなりますが、あまりにも強い値引き要求は導入後のサポートにも影響するため、相互に合意形成を図りながら、適正な価格で購入することをお勧めします。事前に、先輩や友人にも購入時の見積りを見せてもらい、相場感をもって交渉すると良いでしょう。
(5)最終選考
価格交渉が進み、メーカーが絞り込まれましたら、メーカーを決定します。少なくとも稼働予定日の3か月前には終了してください。メーカーと発注書や契約書を取り交わす際に、最終確認として、「端末数は適正か」「サポート内容は十分か」「5年後の更新時の対応について契約に盛り込まれているか」「契約内容に不利はないか」「新たに費用が突然増えたりしないか」といった事項について、十分な打ち合わせを行ってください。
オンプレミス型電子カルテとクラウド型電子カルテの違い
2010年の「医療分野のクラウド解禁」以来、診療所においてもクラウド型電子カルテが増えています。現在は、オンプレ型とクラウド型の電子カルテが混在している状況です。そこで両者の違いを整理しておきます。
オンプレ型は、サーバを診療所内に設置し、診療所自らが管理するのに対して、クラウド型は企業が用意したクラウドサーバを利用するため、サーバ管理は企業側で行うことになります。専門の担当者をおけない診療所にとっては助かることでしょう。
サーバ管理が企業側に移ることで、「サポート」の在り方にも変化が生まれています。従来、電子カルテなど、診療所の基幹システムにトラブルがあると、メーカーや販社が大急ぎで駆けつけ修理をしていました。この駆けつけサービスはサポート拠点との距離に関係しており、拠点が近くにない場合は、大きなトラブルとなっていました。一方、クラウド型になると、システムトラブルのほとんどは企業内のサーバで解決可能になり、移動時間のロスがなくなります。また、ハードのトラブルについても、インターネットにつながる環境さえ障害がなければ、ハードを交換するだけで対応が可能となります。「サポート」の考え方が根底から変わっているのです。
「診療報酬改定の対応」についても、クラウド型であれば、リアルタイムで更新が可能になります。朝、電子カルテを立ち上げるだけで自動的に最新の情報に変わっているのです。
クラウド型で心配なインターネットの障害については、障害が発生した際の対応を忘れずに確認しておいてください。ちなみに、この障害とはインターネットのスピードダウンも含まれます。医師が毎日8時間以上使用する電子カルテが遅いとなれば、ストレスはどんどん蓄積されていきますからスピードは大変重要な問題だと考えます。
電子カルテ選定の6つのポイント
電子カルテは、どんな基準で選べば良いのでしょうか。電子カルテを比較するためには、「サーバ」「操作性」「機能」「サポート」「コスト(価格)」「周辺機器」の6つの視点で比較することを提唱しています。各視点の比較ポイントを解説します。
(1)サーバ
サーバタイプには、「オンプレミス型」と「クラウド型」、また、院内サーバとクラウドサーバの両方に配置する「ハイブリット型」と呼ばれるものもあります。システムのスピードはサーバと端末数に影響しますので、同時に稼働する端末数を伝え、スピード面での変化がないかを確認します。また、電子カルテをインターネットにつなぐメリットおよびデメリットを検討してください。この際に、「サイバーセキュリティ」についても十分確認しておくと良いでしょう。
(2)操作性
「操作性」とは、UI(User Interface)とも呼ばれ、ユーザーが使いやすいようにシステムが設計されているかを確認します。具体的には、画面デザインがシンプルで見やすいか、慣れ親しんだ2号用紙に近い画面構成であるか、ボタン操作とアクションに違和感がないかなどを確認します。
(3)機能
「機能」とは、それぞれのシステムが保有している「働き」のことで、何ができるかということです。診療所の電子カルテはパッケージ化されていますから、その中に要求する機能があるかを確認することになります。まずは、標準機能とオプション機能をしっかり確認し、要求する機能に優先順位をつけ、現時点で足りない機能は将来開発予定があるかを確認しておくと良いでしょう。
(4)サポート
「サポート」は、導入前のサポートである「セッティング・操作指導」と導入後のサポートである「保守」があります。「保守」の中には、診療報酬改定の対応、トラブル時の対応、日々の相談などがあります。前者は電子カルテを使いこなすための準備、後者は電子カルテを止めないための保険と考えれば良いでしょう。
(5)コスト(価格)
電子カルテの「価格」は、見積もりが複雑であり、簡単に理解することは難しいと感じるかもしれません。見積もりを見る上で押さえておくべきポイントは、(1)電子カルテとレセコンをセットで考える(2)ハードは切り離して考える(3)イニシャルコスト(初期費用)とランニングコスト(月額費用)をトータルで考える(4)電子カルテの更新にかかるコストを確認する、などです。
(6)周辺機器
電子カルテとつながる様々な周辺システムが存在します。連携が多いシステムとしては、PACS(医用画像管理システム)、院内検査管理システム、Web予約システム、Web問診システム、セルフレジ、オンライン診療システムなどがあります。これら周辺システムについては、電子カルテの中にサービスとして組み込まれているもの、別メーカーのシステムと連携するものがあります。別メーカーの場合は連携実績、そして連携コストが発生するので確認が必要となります。
著者・監修:MICTコンサルティング株式会社
発行元:富士通Japan株式会社
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