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人と動物・共生社会の未来像1 ~日本におけるペット事情~

人と動物・共生社会の未来像1 ~日本におけるペット事情~

画像はイメージです。

動物と一緒に暮らす社会が人と未来を豊かにする

アメリカやヨーロッパなどの海外では、ペットと住むことが飼い主の心身の健康や生活の質の向上に大きくかかわっていると言われてきています。
実際に、私も25年以上、動物医療の現場に携わってきましたが、飼い主さんとペットとの強い絆や関わりを多くみてきました。
今回から全4回にわたり、動物と人が一緒に生活することでどのような影響があるかをお話していきます。

ペットと高齢化の関係

一般社団法人日本ペットフード協会が毎年実施している「全国犬猫飼育実態調査」によると、2020年の犬の飼育世帯率は11.85%と、過去5年間で減少傾向、猫の飼育世帯率は9.6%でほぼ横ばいで推移しています。
「意外!」と思われる方が多いですが、ペットを飼っている人は、実は徐々に減少しています。
ペットの減少に際して注目すべき点として、高齢化の増加が挙げられます。
医療従事者の皆様もすでにご存知だとは思いますが、今や日本では4人に1人が高齢者で、いわゆる超高齢者社会が到来しています。

若い頃はペットを飼っていたけど、
「体力が衰えて世話をするのが大変」
「ペットを残して自分が先に死ぬかもしれない」
「自分に何かあったとき、託せる人が周りにいない」
といった懸念から飼うのを諦めてしまう方も少なくありません。

ペットと生活環境

高齢者だけではなく、若い人やファミリー層に関しても、
「ペット不可物件だから」
「費用面で厳しいから」
「仕事でほとんど家にいないから」
「長期出張や旅行中に預ける先がないから」
など、今の日本人を取り巻く生活環境や社会構造の問題がハードルとなっています。

このように多くの人がペットを「飼わない」、もしくは「飼えない」状況が今の日本です。

欧米諸国でのペット事情

ドイツなどの欧米諸国でも日本と同様に高齢化が進んでいますが、ペット飼育率は高いと言われています。それは、ペットを飼うメリットがデメリットよりも多いからです。

たとえば、高齢者の社会的孤立などは深刻な問題の1つです。
そうした方でもペットを飼いやすい環境や仕組みを整えることで、自宅での孤独感の解消や、散歩などの外出機会の創出、その先で同じく散歩をしている近隣住民との交流などにもつながり、健康的に暮らし、認知機能も向上するメリットがあります。

また、子どもにとっても、動物とのふれあいが精神的な成長を促すのは間違いありません。実際に、獣医師会の活動の一環で学校へ訪問し、動物飼育に関する授業をさせていただくのですが、家でペットを飼っている子もそうでない子も、皆とても真剣な顔で聞いており、動物の情操教育の価値を改めて感じます。

このように、人と動物が共生できる社会を構築することで、様々なメリットがあると感じています。介助犬やセラピー犬などはよく知られていますが、一緒に暮らすだけでも、地域コミュニティ、人と人との繋がりを増やしてくれます。

さいごに

次回(リンク)からは、より具体的な人や地域社会にもたらされるメリットを紹介するとともに、先述した「飼いたいけど飼えない」人が飼えるような社会に必要な仕組みづくりについて、詳しくお話していきます。

著者:
中村泰治
小滝橋動物病院グループ代表
一般社団法人Living in harmony with pets代表
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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