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待ち時間短縮を実現 医療クラーク育成でクリニック診療効率向上

待ち時間短縮を実現 医療クラーク育成でクリニック診療効率向上

佐野院長の診察とカルテ入力を行う医療クラーク

「患者の院内滞在時間30分以内」を目標に

2015年に開業した京都駅前さの皮フ科クリニックでは、開業時から原則予約制を採用し、効率的な院内オペレーション構築に取り組んできた。そのオペレーションの重要なカギを握るのが、医療クラーク育成だ。

医療クラークが問診から
カルテ入力・説明まで対応

2015年に開業した京都駅前さの皮フ科クリニックは、1日120~150人の患者を常時医師1人、看護師2人、事務兼医療クラーク3人体制で診ています。

同院では開業時から原則予約制を採用し、「患者の院内滞在時間30分以内」を目標に、効率的な院内オペレーション構築に取り組んできました。そのオペレーションの重要なカギを握るのが、医療クラークです。

医療クラークと聞くと、診療内容の入力や書類作成など医師事務作業補助のイメージがありますが、同院ではその役割だけにとどまらず、診療における医師しかできない仕事以外の多くの部分を医療クラークが分業することで、診療効率の大幅アップに貢献しています。

初診患者の来院からの具体的な流れ

1.受付~問診

当日受付担当のスタッフが、患者が記入した問診票と分類カード(「同症状」「別症状」「同姓あり」「お薬のみ」「外出中」などの受診目的や特記事項を表記したカード)をクリアファイルに入れる。
クラーク担当がそのファイルを持ちながら、患者を診察室に呼び込み、問診内容を電子カルテに入力する。

2.診察~患者説明

問診・ヒアリング内容を記入後、コールボタンを押して診察室に医師を呼び出す。医師は医療クラークがすでに入力した問診・ヒアリング内容をもとにすぐに診察に入る。
この際、診察中の記録も医療クラークが実施。診察終了後、処置が必要な場合は別途看護師に指示し、医師は速やかに退出して次の診察室に移動する。また、治療内容や薬の塗り方なども、医療クラークが資料をもとに説明する。

3.会計

医療クラークは診療内容や処方薬の指示などを電子カルテに入力し終えると、診察内容を記入する処置伝票にチェックをしてクリアファイルの最前面に入れて診察室を退出。受付の会計スタッフ用のボックスに入れる。
会計スタッフはその内容をもとに会計作業を行うほか、指示があれば資料を配布する。

このように、医療クラークが受付や診察室を行き来するため、院内設計に関しても、たとえば、4室ある診察室へは待合スペースや受付からすぐに出入りできる配置にしてあるほか、診察室はバックヤードですべてつながっており、医師は基本的にこの後方で待機し、診察準備ができた診察室を順次行き来する流れになっています。

待ち時間短縮を実現 医療クラーク育成でクリニック診療効率向上

京都駅前さの皮フ科クリニック 院内マップ

このオペレーションにより、混雑していない時間帯であれば、患者は予約した時間帯に診察室に呼ばれ、最短で約5分後には診察室を出て、会計まで済ませられるというから驚きです。

佐野陽平院長は、「皮膚科疾患は、こまめな通院が必要な患者さんが少なくなく、1回の診療ごとに処置と指導をしっかり行いながらも、医師の診療時間を効率化していくうえでは、医療クラークは欠かせない存在となっています」と語ります。

研修課程を体系化し
医療クラークの質を平準化

一方で、問診や患者説明など、オペレーションの質を担保するために、医療クラークの教育体制にも力を入れています。

新たに入職したスタッフは、原則として最初の2週間は受付業務研修、3〜4週間目は会計業務研修、5週間目は専用マニュアルに基づいたクラーク業務に関する講習とOJT研修 といった流れで、体系的に仕事を学び、5週間目以降に医療クラークとしてデビューします。

その後、どの業務もまんべんなくできるようにローテーションを組みます。研修期間中は、教育係として先輩スタッフがつき、日々の仕事を振り返る「振り返りシート」などを使いながら、随時フィードバック・フォローしています。

また、スタッフがより効率的な業務に従事できるような体制の整備・改善も行っています。たとえば、電子カルテの入力は、よくある疾患は極力選択式を採用し、自由記述の項目も、「病名欄の1行目は手術歴、2行目は既往歴……」といった入力のルールを統一することで、医療クラークごとの入力内容のばらつきを防いでいるのです。

また、受付のバックヤードも、より診察室との行き来がしやすくなるように、モノの配置や動線など、レイアウトの調整を日々試行錯誤しているそうです。

「医療クラークが丁寧に問診や説明を行っているので、医師の診察時間に対して『短い』といったクレームはほとんどありません。処置や説明に時間がかかる患者の場合も、診察室4室のうち1室で医療クラークがじっくり傾聴・説明し、残りの3室で迅速に他の患者さんの診察を続けるなど、回転効率に支障はないようにしています。とはいえ、まだまだ課題もあるので、経営への勉強をより深めて、さらなるスマートオペレーションに取り組んでいきたいです。」(佐野院長)

著者:
株式会社日本医療企画
クリニックばんぶう 2020年8月号
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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