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老後の生活費2,000万円問題ってホント? 新NISAを推す、国の狙いは?(後編)【長期投資のプロが解説】

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老後の生活費2,000万円問題ってホント? 新NISAを推す、国の狙いは?(後編)【長期投資のプロが解説】

※画像はイメージです。

長い期間をかけることでリスクコントロールがしやすく、初心者でも安心して投資をすることが出来る長期投資。2024年から新NISA制度の導入もあり、運用できる商品の幅も広がりを見せています。その一方で、「話題になっているけど正直よくわからない・・・」という方も実は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、長期投資のプロである澤上龍さん(さわかみ投信株式会社・代表取締役社長)の最新刊『理想の投資と結婚する方法』から、【前編】新NISA前に知っておきたい「長期投資の心構え」に続き、新NISAを推す国の狙いについて解説いただきます。

節約だけでは1,000万円。投資すれば3,000~4,000万円!

22歳、入社と同時に月収の5%を貯金したとしたら、60歳の定年までに一体どれくらい貯まるものなのか? 実は以前、試算したことがあるんです。
国税庁『2021(令和3)年民間給与実態統計調査結果』によると、日本人の給与所得の平均は443万円ほど。それを前提に毎月の給料の5%をずーっと貯金したとしたら……。どれくらい貯まると思います? 意外や意外、たった1,000万円ほどしか貯まらないんです。月収の5%の貯金を、40年近く続けてですよ!

4年ほど前の2019(令和元)年、金融庁が「老後をつつがなく暮らすには二千万円必要」と発表したのを受けての試算でしたが、だいたいこんな数字になりました。老後に必要な二千万円には、とても足りない数字ですよね。

ではこの一千万円を年利5%の複利で投資したとしたら、一体どうなるか──?
私が計算したところでは、60歳で3,000万円、65歳で4,000万円ぐらいになりました。「老後の生活費2,000万円問題」は、投資することで無事解決することが出来るんです。

それほど違いが出るというのに、なぜみんな預金ばかりだったかと言えば、ちょっと前まで銀行に預けておけばおよそ10年で倍になったから。一千万円を10年間銀行に預けておけば、2,000万円にすることが出来たんです。だから銀行に預けておくのも、意味がないわけじゃなかった。ところが現在では、定期預金の金利はわずか0.002%ほど。100万円を銀行に預けても、利息はわずか20円です。みんなの目が投資に向かうのも、無理はない話でしょう。

投資は忘れるくらいでちょうどいい

弊社さわかみ投信の『つみたて投資』は1999年の開始以来年率6.1%の実績がありますが、相場が悪くなれば、3~4%になることもあり得ます。

ですが前編でも言ったように、相場とは上がる時もあれば下がる時もあるのが本質。瞬間風速ということで切り取れば「アレレ?」って時もありますけど、長い目で見て年利の平均が5%もあればいいんです。これだけあれば3,000万円から4,000万円は資産形成できますから、老後はつつがなく暮らせます。

むしろ一般投資家にとって最も重要なのは、その瞬間にどれくらいのリターンがあるかじゃなく、辞め時だと思いますね。つまりは「その資金が必要になるのはいつなのか?」です。それまではリターンの上がり下がりに一喜一憂することなく、むしろ投資していることなんて忘れているぐらいでちょうどいい。

ただし1点だけ注意することは大切で、それは間違ったものに投資しないことです。間違ったものを買うと長い時間、それこそ20~30年といった時間をドブに捨てることになるのでこれはマズイ。けれど間違っていないならば、一時の上がったり下がったりなんて、実はどうだっていい。今言った通り、資産形成とは、長い目で行うものであるからです。

経済紙は「読み手の心理を考えながら読め」!

これは私の場合ですが、経済紙は記事を読んだ読者がどう考え、どう行動するかを考えながら読むようにしています。

「この見出しだと多くの読者が悲観的になるな」「だとしたらこういう心理状態になるだろうから、そろそろこんな行動に出るな」とかですね。つまりファクトはただのきっかけにすぎないと考えて、個人の行動と、その行動が世の中にどう影響するかを見に行くようにしているんです。

本書でも書きましたが、弊社ではお客様にお出しするお茶は伊藤園の製品です。もしもそんな伊藤園でスキャンダルが発覚したとしたら、まずは報道が真実か否かを確認しに行きますが、そのスキャンダルの本質を考えることのほうがもっと重要だと思います。

ちょっとした間違えがあったのか? それともスキャンダルの原因が同社の本質そのものになっているのか? 前半で投資を結婚にたとえましたが、その例で言うとしたら、「これはちょっとした出来心なのか?」「それとも浮気がクセになっているのか?」ですね。

もしもクセになっているのなら、これはもう離婚すべきでしょう。持ち株は売るべきだと考えます。だけど一時の過ちに過ぎなかったとしたら、むしろ買うでしょうね。株を安値で手に入れる絶好のチャンスだからです。

つまりは本質を見きわめてから動きを決めるので、ニュースの見出しだけで「これは大変!」とはならない。報道はある時点での真実しか伝えていないことが多々ありますから、どう解釈するかのほうを、ずっと大切に考えていますね。

新NISA、やるなら無理のない金額を気長にコツコツと!

新NISAのもっとも大きな特徴を上げるとすれば恒久化、つまりは限度額内での非課税期間の無期限化でしょう。

これについては、政府の中でも財務省主税局と金融庁との間で相当もめたと聞いています。それでも無期限化を押し通したのは、国が国民の財産形成にとうとう本気になって、大きく一歩前に出たなという感じがします。

でもこれを先ほどの経済紙の読み方でお伝えしたようなうがった見方をするとしたら、政府がのどから手が出るほど株式の買手を欲しがっているんだろうと見ることが出来ます。

世界経済から日本経済まで、今、どこもみんな厳しいですよね。特に日本の株式相場は日銀が放り込んだお金で支えられているのが実情です。政府は手元に溜まりに溜まった株式の、買手を必要としているんです。
その国民を動かすためには大義名分じゃなく、儲けというニンジンが必要になる。うがった見方をすれば、そのニンジンが新NISAという気もしますね。

「非課税期間の無期限化」という大前進

恒久化、非課税期間の無期限化というのは、これはもう特筆すべき大前進だと思います。
これまでもNISAはあった。一般NISAと積立てNISAです。でもこれ、非課税が5年と20年。もしも20代の若者が積立てNISAを始めたら、40代で売らなくちゃならない。老後を意識し始めるのなんて、40代以降だと言うのに。

それが無期限になったことで、人生の中の使いたい時に使えるようになったわけで、初めて個にマッチしたというか、個でカスタマイズできる制度になりました。
そうした意味では、とてつもない良い制度になったという気はします。

だから新NISAは使い方次第だと思います。自分の生活リズム、先ほどの例でいうなら月収の5%の収入でやろうというなら、相場なんて関係ない。だけれど、新NISAで1800万円の枠がある。これを活用しようとなった瞬間、ドンと入れる人が増えます。ドンと入れて損したら、これはもう、つらいですよ。

投資は気長にコツコツと

新NISAがあろうがなかろうが投資とは気長にコツコツとやるべきものです。
そしてそこに非課税期間が無期限の新NISAがあるのなら、使わない手はありません。ですから新NISAがあるから投資しようというのはきっかけであって、新NISAが本丸ではないということは、重々心得ておくべきだと思います。

著者:
澤上龍
【さわかみ投信株式会社】代表取締役社長
1975年千葉県生まれ。2000年5月にさわかみ投信株式会社に入社後、ファンドマネージャー、取締役などを経て2012年に離職。その間2010年に株式会社ソーシャルキャピタル・プロダクションの創業、2012年にウルソンシステム株式会社の経営再建を実行し、2013年にさわかみ投信株式会社に復帰、1月に代表取締役社長に就任。
現在は、「長期投資とは未来づくりに参加すること」を信念に、その概念を世の中に根付かせるべく全国を奔走中。コラム執筆や講演活動の傍ら起業や経営の支援も行う。株式会社ソーシャルキャピタル・プロダクション代表取締役社長、株式会社Yamatoさわかみ事業承継機構取締役なども兼務。
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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