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事業拡大を目論むが…想定以上の買収資金。何かいい手はないのか?

※画像はイメージです/PIXTA
外部環境の変化・医師の高齢化などが影響し、戦略的にM&Aを活用し、事業拡大を図る医療機関やクリニックが多くなってきています。本稿では、高齢化する医師の現状、分院開業時にM&Aを選ぶ理由を考察し、最後に金融機関からの融資以外の新たな資金調達手段をご提案します。
深刻な診療所医師の高齢化
厚生労働省の統計によると、令和4年(2022年)12月31日時点における日本の病院・診療所に勤めている医師数は、327,444名、医師平均年齢は50.3歳です。業態別に医師数をみると、病院では220,096名(全体の67%)、平均年齢は45.4歳と全体の平均年齢よりも低くなっています。一方、診療所では107,348名(全体の33%)、平均年齢60.4歳と全体の平均年齢よりも高く、高齢化していることがわかります。22年前の平成20年(2000年)の診療所の医師の平均年齢58.0歳と比較し2022年時点で2.4歳も高いことからも明らかです。
さらに、40歳未満の医師の割合は、全体の5.8%(6,174人)と、診療所での若手医師の成り手がいません。
高齢化の原因と考えられるのは、診療所の医師は定年退職が通用しづらい業種で、体力の続く限り現役で働いている人が多いからだと思われます。このように診療所の存続問題は年々深刻になっています。
分院開業にM&Aを選択する理由
平均年齢が60歳を超える高齢となった医師の中には、地域社会のことを考え、閉院を避けて、事業承継相手を探すことが増えてきました。こういった場合に、M&A専門の仲介会社や金融機関、税理士法人などに仲介を依頼することで手軽にM&Aができる環境になっています。例えば、福島県では、医業承継バンクマッチングナビという承継サービスが医師会主導で発足するなど、承継ニーズの高まりをキャッチしたサービスも始まっています。
こういったM&Aニーズの高まりは、診療所を新たに開業するよりも事前のマーケット調査や集患、人材採用などを省き、事業拡大を比較的スムーズに行いたい医師や医療法人が増えているという背景があります。
しかしながら、準備しておかなければいけないのは・・・
事業拡大の買収において相応の資金が必要になることは明白です。
M&Aにおいて、出資持分の取得をするために相応の金額を用意しなければなりません。退職金・贈与税・所有不動産関連費用・遊休資産の整理・出資持分保有者及び保有割合の確認(出資持分あり医療法人の場合)、仲介手数料、行政手続き費用など多岐にわたります。
取得資金の相場は数千万円~数億円かかるとされており、余剰資金だけでは簡単には捻出できません。
この資金を調達するために考えられるのは、金融機関からの融資ですが、資金調達までに時間がかかる、融資を依頼しても審査が通らない、などうまくいかない場合があります。そういったときのために、別の調達手段があることをご存知でしょうか?
一般企業では「売掛金」など将来回収する見込みの債権は、医療機関で言えば「診療報酬」がそれにあたります。ファクタリングと聞くと、あまり良いイメージを持たれない方は少なからずいらっしゃるかと思いますが、近年、ファクタリングを活用する医療機関が増えています。
ファクタリングとは診療又はサービス提供に発生する債権をファクタリング会社に売却することで資金を調達する方法です。ファクタリングの大きな特徴として、審査・手続きが銀行融資よりスピーディで簡便なので素早く資金調達が可能な点や既に診療又はサービス提供し発生している債権だけに限らず、事業を継続することで将来発生する見込みの債権まで資金化出来ることもある点です。
ファクタリングは期限が迫っている急なM&A案件への対応や金融機関からの融資だけでは資金が十分ではない場合など、様々な場面で活用できます。
M&Aにも活用できる「診療報酬ファクタリング」
前段でファクタリングを利用する医療機関が増えてきていると述べましたが、具体的にどのぐらい増えているのか見てみましょう。
社会保険診療報酬支払基金が公表している、平成28年度に債権譲渡を行った医療機関等の数はひと月平均5,822件、金額にすると494億円でした。これに対し、令和4年度の数はひと月平均8,021件(平成28年度比+2,199件)、金額にすると566億円(同+72億円)と大幅に増えてきています。
銀行融資以外にもいくつかの資金調達手段を確保しておくことは、M&Aによる事業拡大はもちろんのこと、経営を安定させるためにも大事なことですので、診療報酬ファクタリングも手段の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
- 著者:
アクリーティブ株式会社
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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