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医療法人化の“ベストなタイミング”と“避けたほうが良いタイミング”(前編)【税理士と司法書士が解説】

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医療法人化の“ベストなタイミング”と“避けたほうが良いタイミング”(前編)【税理士と司法書士が解説】

※画像はイメージです/PIXTA

クリニックを開業してしばらく経つと、さまざまな理由から「法人化」を検討することがあるでしょう。ただ、法人化にあたっては「タイミングが重要」と、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士と、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布代表司法書士はいいます。今回から前編・後編の2回に亘り、税理士・司法書士の両視点から医療法人化にまつわるケーススタディについて、お話いただきます。
今回は、法人化の“ベストなタイミング”と “避けたほうがいいタイミング”をみていきましょう。

医師から業務を依頼されるきっかけとそれぞれの業務内容とは?

医療法人化の“ベストなタイミング”と“避けたほうが良いタイミング”(前編)【税理士と司法書士が解説】

【多賀谷会計事務所 税理士 CFP】宮路 幸人氏

――どのようなきっかけでクリニック設立(開業)や医療法人化を目指す医師から業務を依頼されることが多いのでしょうか。

宮路)基本的に既存のお客さまからの紹介でご依頼いただくことが多いですね。私の場合は、もともと所属している税理士事務所で担当している医師がおり、その担当を引き継ぐ形でした。

現在、日本では勤務医からクリニックを設立(開業)する医師が4人に1人程度いると言われています。その方々の多くは、大学病院等の勤務医を経て40歳前後で開業しています。開業医(個人事業主)として数年実績を積み、所得が上がったタイミングで医療法人化するのがよくあるケースです。

その際、医師が直接インターネット等で税理士を探してくるというのはあまり見かけません。医療コンサルタントの仲介や、先輩医師の紹介を経て税理士と繋がることが大半です。

――税理士は、どのような業務を依頼されるのでしょうか。

宮路)帳簿への記録の仕方や、税金計算、必要な届出を準備することが主に依頼される業務内容です。開業準備の段階では、開業をサポートする医療コンサルタントを頼る医師が多いと思います。税理士の業務は、主に開業した後に発生します。

――司法書士の場合はいかがでしょうか。

加陽)税理士・宮路先生と同じく、私も既存顧客からの紹介でご依頼いただくケースがほとんどです。

医療法人化するまでに必要な手続きのなかで、都道府県からの設立許可申請が最も複雑で手間と時間がかかります。医療法人の設立許可申請を専門に行う司法書士も存在するほどです。

医療法人化手続きにおける司法書士の関わり方としては、大きく分けて2パターンあります。

  • 『設立登記手続きのみを依頼される』
  • 『医療法人化の設立許可申請から設立登記まで一連の流れをすべて依頼される』

また、医療法人化すると年に1度は資産の総額を登記簿に反映させる必要があり、2年に1度は理事長の改選が発生します。少なくとも年に1度は変更登記手続きが必要になるので、単発でご依頼いただくこともあります。

その際、医師が直接インターネット等で税理士を探してくるというのはあまり見かけません。医療コンサルタントの仲介や、先輩医師の紹介を経て税理士と繋がることが大半です。

開業医がクリニックを医療法人化させるベストなタイミングとは?

医療法人化の“ベストなタイミング”と“避けたほうが良いタイミング”(前編)【税理士と司法書士が解説】

【司法書士法人永田町事務所】加陽麻里布氏

――開業医がクリニックを医療法人化させるベストなタイミングがあれば教えてください。

加陽)医療法人の設立許可申請は、開設予定地の管轄の地方自治体で行います。申請受付期間は地域によって異なり、提示されたスケジュールに合わせて準備を進めていくことになります。

年2回しか申請を受け付けていない場合や、申請前に事前の説明会への参加が必須なこともあるため注意が必要です。医療法人化を検討する場合、まずは申請受付期間など自治体のスケジュールを確認しましょう。

また、個人事業主としての実績の有無によっても、医療法人化の難易度が変わります。すでに実績がある場合、必要な書類は少なくて済みますが、実績がない場合は事業計画書から作成が必要です。

事業計画書の作成においては、医療コンサルタントからアドバイスを受けることもできますが、当事者である医師が作成しなければならない書類です。医療法人化するにあたって準備すべき書類が非常に多い(※)ため、医療法人化までの準備期間として1年弱程度は見込んでおいたほうがよいでしょう。

(※)例:東京都保険医療局 医療法人設立の手引き

――税理士の目線ではいかがでしょうか。

宮路)一般的に、開業して3年程度経過し、安定して所得が増加してきたタイミングで、税金対策として医療法人化を検討する医師が多い印象です。

所得税は累進課税で所得が高くなるほど税率が上がるため、所得が1,800万円を超えると所得税が40%、住民税が10%、更に自由診療等に事業税が加算される場合ですと合計の税率が50%を超えてしまいます。一方で、医療法人化すれば一般的に税率は約30%程度に抑えられます。

具体的には、課税所得が1,800万円の場合、個人事業主への税額合計は計約620万円、法人であれば約540万円となります。

課税所得が1,800万円を超えてくる頃を、節税目的で医療法人化する際の目安とすると良いでしょう。

また、個人事業主は診療所を1つしか開設できませんが、医療法人化すると複数開設することが可能になります。診療所を複数開設して事業拡大を考えた時も、医療法人化するのに良いタイミングといえます。

その他は、事業承継する際も医療法人化を検討したいタイミングです。個人事業主の場合は、事業を相続すると、その診療所および診療設備に対し相続税がかかりますが、出資なし医療法人の場合、出資持分がないため利益の内部留保の蓄積に伴う相続税の負担はありません。スムーズな事業承継のために、医療法人化するケースがあります。

医療法人化を避けたほうがいいタイミングとは?

医療法人化の“ベストなタイミング”と“避けたほうが良いタイミング”(前編)【税理士と司法書士が解説】

――医療法人化を避けた方がよいタイミングがあれば教えてください。

宮路)加陽先生が話されていたように、医療法人化の申請受付時期は各地方自治体によって異なるため、「申請受付時期が迫っているから」と慌てて医療法人化を進めるケースも想定されます。十分な検討や準備のないまま医療法人化を目指すのではなく、税金面をはじめ、あらゆる面からメリットとデメリットなどあらかじめ検討しておきましょう。

医療法人の場合は給料制のため、個人事業主であった時よりも個人の所得が減るということはよくあることです。医療法人となればスタッフの社会保障費などを事業主が負担することとなり、その分のコストが増えます。毎年役所に提出しなければならない事務的な手続きも増えるため、これらの負担も加味して検討することをおすすめします。医療法人化は節税に有効ではありますが、個々の状況を加味して十分にシミュレーションしましょう。

――司法書士の目線ではいかがでしょうか。

加陽)医療法人化すると行政の関与度が高くなるので、各地方自治体に提出しなければならない書類が増えるのはどうしても避けられないですね。

また、医療法人化すると資産の自由度は低くなります。

たとえば、医療法人が所有していて持てあましている土地があるとしても、資産の使い道が医療法で制限されているため駐車場経営に回すということは一切できません。

とはいえ、事業の拡大を考えると法人化が必須ですから、「メリットを享受できるタイミング」を見極めることが大切です。

後編は近日公開予定。医療法人のメリットとデメリットと注意点について語っていただきます。

著者:
【多賀谷会計事務所 税理士 CFP】宮路 幸人
会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。 強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。 常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。

【司法書士法人永田町事務所】加陽 麻里布
司法書士合格後、司法書士事務所で実務経験を積み、2018年に独立。永田町司法書士事務所を設立。2023年1月に法人化し、司法書士法人永田町事務所に。
業界“ファーストクラス”を基本理念に、依頼者のビジネスと日常を有利にすべく日々邁進中。執筆活動にも積極的で、媒体を問わず精力的に活動している。

(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)

提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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