輝く組織 Shining Organization

仕事・キャリア・評価の“見える化”で 意欲ある医療クラーク育成

仕事・キャリア・評価の“見える化”で 意欲ある医療クラーク育成

人材育成は永遠のテーマではないでしょうか。

クリニックを経営していく上で、人材育成に課題感を感じている経営者は多いです。
今回は人材育成の中でも、医療クラーク育成に積極的な医療法人をご紹介します。

受付から診療補助まで
マルチな仕事を任せる

医療法人社団ナイズは、東京都内を中心に7軒の小児科・内科の診療所および健診クリニックを展開。総勢約150人を超える診療所グループです。医療クラークは約60人近く在籍、組織内に専門の「医療クラーク部門」もあります。1軒6~10人、分院にはそのまとめ役のクラークリーダーがいる

医療クラークの仕事は多岐にわたります。受付業務、iPadを使った事前問診のサポート、レセプト請求、診療中にうまく口の開けられない子どもの介助や、ワクチン接種間隔が適切かどうかの一次チェックといった看護業務の補助――など、患者対応から診療補助までマルチタスクを担っているのです。

金谷義久本部長は、「患者さんが最初に出会うのが受付の医療クラークで、待ち時間や診療などさまざまな場面でもストレスなく過ごせるように気を配る、まさに診療所の顔です」と説明します。

仕事を4つに分類し教育
約3カ月で独り立ちさせる

60人もの医療クラーク一人ひとりの仕事の質を担保するため、独自の研修・教育制度を構築しています。

まず、医療クラークを含め、入職した全スタッフは1日目に必ず、合同オリエンテーションで法人の理念やミッションを学び、翌日からは診療報酬の算定など各職種別研修に入ります。その間も医師や看護師による医療基礎研修もあり、入職3~4日間で、同法人の価値観や医療に関する基礎要素を学んでいきます。

法人で働くうえでの基礎を学んでから、各分院でOJTがスタート。OJTでは段階的に学習できるように、医療クラークの場合はメーン業務を、①受付での窓口業務、②保険証の登録、電話対応、③診療行為のレセプト請求業務、④iPadによる問診――の4つに分類しています。個人差はありますが、約3カ月で全項目を習得できるようなフローになっている。

どこから取り組むかは、各分院で多少変わります。キャップスクリニック北葛西のクラークリーダーの藤原紫帆さんは、「北葛西では、②か④から始めることが多いです。①と③は専門的な知識なども必要で覚えるのにも時間がかかるため、比較的作業のわかりやすい②や、患者さんと触れ合う④から進めるほうが、研修スタッフもなじみやすいのです」と、説明します。

業務終了後研修スタッフは、毎日仕事の課題を洗い出す「振り返りシート」に書き込みます。先輩クラークたちはそれを確認し、今後の指導に反映させるのです。また、新人からの質問に対し各先輩クラークの答えが異なると混乱を招くため、日頃からスタッフ同士がオペレーションを確認し合っています。今後は、昼休憩を利用したマニュアルの読み合わせも検討中だそうです。

また、月1回各分院、各職種のリーダーが集まるリーダー会議を実施し、それぞれの現場での研修の課題や、好事例などを共有し、研修の質向上につなげています。

人事考課を導入して
スタッフの意欲を高める

スタッフのやりがいやモチベーションを高める一環で、同法人では給与に反映されるインセンティブ制度を実施。医療クラークでは主に、拠点業績達成、かかりつけ登録の件数と、口コミが基準です。

かかりつけ登録件数は、各医療クラークの月当たりのかかりつけ同意書の件数で計算。一方口コミは、医療機関検索サイトなどで自分の所属する分院の良い口コミを見つけ報告することを評価します。

金谷本部長は、「口コミには、自院がどんな患者さんからどんな評価を受けているか、一人ひとり敏感にキャッチアップしてほしいという狙いがあります」と話します。専用フォームへ見つけた口コミとURLなどを書き込み、バックオフィス機能を担うコーポレートサポート部が集計し精査する仕組みです。

また、医療クラークのキャリア形成も提示。「スタッフ」→「サブリーダー」→「リーダー」→「統括リーダー」の順でキャリアアップする流れにしています。現在はクラークリーダーなどによる業務態度や実績評価をもとに、本部が決めていますが、今後は明文化された基準を設けることも検討しているそうです。

同法人では、2012年の創立当初から医療クラークの採用、育成に取り組んできました。医師からも診療に専念できると好評のほか、医師の残業時間も月平均10時間を切るまで削減するなど、数値的な成果も表れています。マルチタスクな医療クラークの下支えこそ、同法人が短期間で成長した要因の一つなのかもしれません。

著者:
株式会社日本医療企画
クリニックばんぶう 2019年4月号
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

記事紹介 more

ドライブの醍醐味のひとつに、途中で立ち寄る「道の駅」を挙げられる方もいらっしゃるのではないでしょうか…

在宅医療や往診に力を入れたい! でも……在宅医療を行うクリニックは、高齢化社会において重要な役割を果…

「最近、風邪が流行っているわね。」「駅前のクリニックが優しい先生でよかったわよ。」というような世間話…

このところ落ち着きを取り戻していた電気料金が、2024 年に入り再び上昇を始めています。1 月の電力…

『遠隔読影サービス』を提供しているシミックソリューションズ株式会社様より、今回は特別に<シャープファ…

「改正電子帳簿保存法」をご存じでしょうか。もともと1998年に施行された「電子帳簿保存法」が2022…

高所得者や一定以上の資産を有している場合、資産防衛や税金対策など、それぞれの目的のために「不動産投資…

ドライブの醍醐味のひとつに、途中で立ち寄る「道の駅」を挙げられる方もいらっしゃるのではないでしょうか…

2015年の税制改正以降、相続税の課税対象者が増加傾向にある日本。せっかく苦労して稼いだお金に多額の…