医師をはじめとした医療従事者の“働きすぎ”が問題となっています。こうしたなか、国は今年4月から「医師…
※画像はイメージです/PIXTA
飲食店でロボットがスタッフの代わりに調理や配膳したり、観光地に案内役としてAIコンシェルジュが導入されたりと、人件費削減のためのデジタル化やデジタルトランスフォーメーションが進む昨今。しかし、クリニックにおいて患者を受け入れ、医師や看護師をつなぐ役割をする「医療事務スタッフ」は、代替不可能な人財です。地域に根づく「かかりつけ医」として、0歳から100歳までのトータルサポートを行う高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭氏は、どのような基準でこの医療事務スタッフの採用を行っているのでしょうか。本記事で詳しくみていきましょう。
クリニックで重要な役割を担う「医療事務」
「医療事務(クラーク)」は、診療所・病院などの医療施設や調剤薬局において、さまざまな仕事を行っています。来院された患者の受付対応はもちろんのこと、クリニックの案内、医師や看護師など他のスタッフとの連携から、診療費の計算や請求、売り上げや支払いなどの経理、診療報酬請求や公費医療請求の文書作成にいたるまで、その業務内容は多岐にわたります。
したがって、優秀な医療事務の存在は、クリニックの健全な運営に大きく影響します。全国の医療施設や調剤薬局では、その職場のルールをある程度早期に理解し「即戦力」として働ける医療事務スタッフが常に求められています。
今回は、筆者が採用面接時に重視しているポイントをお伝えします。
ポイント1.身だしなみ、挨拶などの「第一印象」
初めてのお店や場所を訪れる際、どういう雰囲気なのか、どういう店員やスタッフがいるのかわからず緊張することは至極当たり前のことです。このため、クリニックの“顔”となる医療事務スタッフの第一印象が、病院全体の評価や安心感につながるといえます。
この「第一印象」は、その多くが「非言語的コミュニケーション」によって成り立っています。
非言語的コミュニケーションとは言葉に頼らないコミュニケーションのことで、「話し方」や「表情・しぐさ」、「外見」、「態度」、「声のトーン、ボリューム・速度」などを指します。
この第一印象は「5~10秒ほど」でおおむね決まるといわれています。したがって、面接時に適切な服装であるか、身だしなみが整っているか、清潔感があるかなど、そのクリニックのイメージとマッチしているかが重要になってきます。また、入室時の第一声、つまり挨拶の仕方も気をつけたいところです。
医療現場は、他業種よりも衛生的な要素が多く求められるため、身だしなみについてはより気を遣う必要があるでしょう。くつやカバンなどの持ち物にも、汚れがひどくないかチェックしておく必要があります。
ポイント2.コミュニケーション能力
また、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力も医療事務スタッフに求められるスキルです。
ご存知の通り、医療事務スタッフは医師や看護師などと協力をしながら医療機関を運営します。チームとして円滑に業務を遂行するうえで重要なポジションとなる医療事務スタッフには、このようなスキルが不可欠です。
ここでの「コミュニケーション能力」は、面接時にまず会話が成り立つかどうかということです。決してアナウンサーレベルの話術は必要ありませんが、質問に対してしっかりとした意思疎通ができるかどうかが見られます。
基本的には、こちらの質問に対しての返答が明確でその理由がわかりやすく、意図をしっかりと汲めているかを見ています。そうでないと、業務や他スタッフとの人間関係構築が困難な可能性があるなど、ネガティブな印象を持ってしまいます。
「プライベートの充実度」も重要
面接時、質問内容としては、筆者は以下のようなことを尋ねます。
●志望動機
●自分のキャリアを振り返って、どういうことに一生懸命取り組んできたか
●人に負けない自信があることはあるか
●座右の銘
●職歴で学んだことやインパクトがあったこと
●これまでのキャリアプランと就職における意気込み
筆者は上記のような質問にしっかりと回答できる人を優先的に採用しています。面接時間も15分程度と短時間にして、先に簡潔に骨子・結論を述べてからその理由を肉付けし、最後に重要なことをまとめられるかどうか、わかりやすく要点を絞った話し方かどうかを見極めています。
また、受診患者に対して一様な話し方ではクリニック受付としては不十分です。このため、話し方も重要であり、あえてゆっくりと少し大きな声で、余力があれば緩急や声のトーンの大小を音楽の楽曲のようにつけてみることも、正しい日本語・敬語などの言葉遣いと同様に重視するポイントです。
また、筆者は
●学生時代の思い出
●自分の趣味で語れること
●自分の家族のこと
●最近話題になっているニュース
●前職の1日の過ごし方と休日の過ごし方
●医療以外の職種経験がある方はその強み
についても質問することが多いです。最終的に採用を検討する人にはクリニックを見学してもらい、いい点や改善点、疑問点などを聞きます。また、現在のスタッフとも会話してもらい、多角的に採否を判断します。
自分の趣味やこれまでの経験を具体的に語れる人は、組織のリーダーを任せられる傾向があり、人柄も良好であることが多いため、プライベートが充実しているかどうかも採用基準の1つの軸にしています。
また、育児や介護の問題を抱えながら勤務するスタッフも多いため、その部分もしっかりと把握していきます。急な欠勤の可能性があるか、その際にカバーができるかどうかなど、家族の状況なども重視し、もしこういった部分に難がある場合には、採用形態を変えることも検討します。こうした事情を聞かずにそのまま採用すると、数ヵ月以内に早期退職となってしまい、再び募集をかける必要が出るなど、採用コストと時間が水の泡となってしまうためです。
まとめ
以上、これまでの経験から筆者が医療スタッフの採用時に重視しているポイントを挙げてきました。どのような人材を必要としているかはクリニックによって異なると思いますが、採用時の参考にしていただければ幸いです。
- 著者:
高座渋谷つばさクリニック
院長 武井 智昭(たけい ともあき)
小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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