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「経験者」を過信するのはNG…クリニックの「新入職員教育」やってはいけないこれだけのこと【医療コンサルタントが解説】

「経験者」を過信するのはNG…クリニックの「新入職員教育」やってはいけないこれだけのこと【医療コンサルタントが解説】

※画像はイメージです/PIXTA

医療業界では昨今、医師、看護師とも深刻な人手不足に悩まされています。人材難を解消しようと積極的に採用を行うも、新人がすぐに辞めてしまう……そんな“負のサイクル”に陥っているクリニックも少なくありません。そこで、クリニックの人材定着率を高めるために「新入職員教育でやってはいけないこと」をみていきましょう。株式会社船井総合研究所の病院・クリニック経営.comの、川本浩史コンサルタントが解説します。

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医療業界で叫ばれる、深刻な人材不足

医療業界は近年、深刻な人材不足が叫ばれています。厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(2024年4月)によると、全職種の有効求人倍率(全国平均)が1.08倍であるのに対し、「看護師」は1.86倍、「医療技術者」は2.82倍、「その他保険医療の職業」は1.82倍と、軒並み非常に高い求人倍率となっています。

このような状況の背景には、医療従事者の高い離職率があります。看護師を例に挙げると、日本看護協会「病院看護実態調査」(2023年)のデータでは既卒看護師の離職率が平均16.6%と非常に高い数字となっており、特に「個人が運営する事業所」における離職率は34.4%と、群を抜いて高い結果が出ています。

ただでさえ人手不足の現状で、募集を行ってもなかなか応募が来ない、採用できたとしても多大なコストがかかる、せっかく入職してもすぐに退職してしまう……このような“負のサイクル”に悩む先生も少なくありません。

こうした負のサイクルを断ち切るためには、せっかく採用した人材を「いかにして自院に定着させるか」が重要です。

そこで、人材定着に大きな影響を与える「新人教育」について、よくあるNG例をもとに解説していきたいと思います。

【NG例①】業務マニュアルが存在せず、現場スタッフに教育を丸投げする

業務マニュアルが完全に整備されているクリニックは、決して多くありません。しかし、仮に簡易的なものであったとしても、マニュアルがあるのとないのとでは大違いです。

マニュアルがないと、新しく入った職員にとっては「この業務はこの進め方で正しいのか」「どこまでやればいいのか」がわかりません。また指導する側も指示が曖昧になってしまい、勤務日や指導者によって言うことが変わっている……という事態に陥りがちです。

マニュアルは、新入職員、既存職員双方にとっての「共通言語」、そして仕事の「指針」となるものです。マニュアルと聞くと無味乾燥な文章の羅列を思い浮かべるかも知れませんが、なにも格式ばったものを作る必要はありません。

文章でマニュアルを作るのが手間なのであれば、「見本となる先輩職員の仕事の進め方を動画撮影する」「理想の“状態”を写真に収めておき、仕事の完成形を明確にする」など、画像や動画を使えば、手軽にマニュアルとして活用することができます。

【NG例②】「経験者」を過信し、フォローを疎かにする

職員を「経験者枠」で採用したものの、思ったほど仕事ができない……という経験はないでしょうか? 実は、クリニックの業務現場は属人性が非常に高く、クリニックごとに業務の進め方やルールが大きく異なります。

以前の職場経験が長ければ長いほど“その職場の手順”が染みつき、転職先の手順に馴染めないことも珍しくありません。経験者こそ、以前の職場との進め方に違いはないか、やりにくいところはないかなど、採用した側の丁寧なフォローアップが必要なのです。

またこうした取り組みにより、むしろ自院のそれまでの進め方が非効率であった、という気づきにつながる可能性もあります。新たに採用したスタッフのやり方が違うことに対しては、困ったことというよりむしろチャンスと捉えられると、クリニック全体の成長にもつながるでしょう。

【NG例③】最初からすべての業務に触れさせる

クリニックの業務は多岐にわたります。よく「入職したら、まずひととおりの業務を体験してもらう」という進め方をしているところもあるようですが、結果としてそれぞれの業務を覚えるのに時間がかかってしまったり、本人が期待されるレベルに到達できない結果離職につながってしまったりするケースが散見されます。

マニュアルとともに覚えるべき業務の順番を明確にし、1つの業務を習得してから次の業務を学んでもらう、と段階を踏んだ教育を進めるべきでしょう。

【NG例④】現場スタッフが納得していない

最後は直接的な「教育」ではありませんが、そもそも既存職員が新入職員の入職に納得しておらず、職員が満足のいく新人教育を受けられないというケースがあります。

たとえば、院長が「新しい取り組みを進めるために人員の増強を図りたい」と、既存職員に断りなく採用を進めてしまうというケースがよくみられます。

こうした場合、せっかく入職したスタッフが現場スタッフからの理解を得られず、実質的に教育を放棄されてしまうケースが珍しくありません。新入職員からすると「院長から聞いていた話と違う」「先輩スタッフから歓迎されていない」と感じ、早期離職につながってしまうのです。

こうした悲劇を避けるためには、あらかじめコミュニケーションをとっておくことはもちろんのこと、新規採用時には教育担当となる部門スタッフも同席させたり、場合によっては1次面接を任せたりすることで、採用責任を分担する方法が有効です。

負の連鎖を断ち切るために「離職を防ぐ」採用を

近年、さまざまなITツールの登場によって、クリニックにおいて「人でなくてもできる」業務が徐々に増えつつあります。しかし「人でなければできない」業務がゼロになることは決してありません。

労働人口の減少にともなって、医療スタッフの確保はますます難しくなることが想定されます。

採用→離職→採用を繰り返すことは、金銭的コストがかかるほか、院長や既存職員にとって時間的・精神的な負荷が大きいことはいうまでもありません。こうした負のサイクルを断ち切るためには、「早期離職をいかに予防するか」という観点で採用を行うことが重要です。

今回お伝えした【NG例】を参考に、新入職員が働きやすく定着しやすい職場づくりを進めていただければと思います。

著者:
川本 浩史/船井総合研究所(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)

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