医師をはじめとした医療従事者の“働きすぎ”が問題となっています。こうしたなか、国は今年4月から「医師…
※画像はイメージです。
リタイア後に赤字生活とならないために・・・
総務省の家計調査によると、医師をはじめとする高所得者の生活費は非常に高額(月額80万程度、年間1,000万円程度)であり、「実は貯蓄もままならない」といった現実があります。高所得者の浪費生活から一転、生活資金にさえ困る悲惨な老後を送らないためにできることを紹介します。
高年収なのに貯蓄できない?医師のライフスタイルの現状
医師の年収は、一般的なビジネスパーソンよりもかなり高額です。しかし、高収入にもかかわらず貯蓄もままならないライフスタイルに陥る医師は少なくありません。
若いうちはともかく、老後の備えを意識する年代になると自分の貯蓄が十分か気になる医師も多いのではないでしょうか。
医師の生活実態から老後に必要な資金、今からできる備えまでを解説します。
平均給与所得は全体の3倍と高額だが…
厚生労働省の調査によると、2020年における一般病院に勤務する医師の賞与を含む年間給与は平均1,323万円です。
一方、同年の民間給与実態統計調査(国税庁)において、給与所得者全体の平均は433万円であり、医師の所得は一般の給与所得者と比べてかなり高い水準にあることがわかります。
この数字だけをみれば医師は経済的に恵まれており、老後の蓄えも十分備えられるように思われます。
しかし、多くの貯蓄を持つ医師がいる一方で、貯蓄もままならない生活に陥っている医師も決して少なくありません。
その原因のひとつは、一般のビジネスパーソンなら払わなくてよい、「医師ならではの消費項目」があるからです。
思わぬ盲点?「医師特有」の消費項目
医師の生活費を圧迫しがちな消費項目としては、次のような費用が考えられます。
1.接待交際費
2.研究費
3.教育費
4.住居費
勤務医であれば同僚や後輩と食事に行く費用や、ゴルフなどレクリエーションに使う交際費がかかります。開業医であればそれらに加え、取引先との接待交際費もかかります。安く済ませるわけにもいかないとなれば交際費は家計を圧迫します。
また、医師は専門職ですから常に最新の医療情報を入手し、知識をアップデートしなければなりません。
勤務医も学会の参加費用を全額病院が負担してくれるとは限らず、自己負担が生じることもあります。開業医は、自身の収入から学会費用を捻出しなければなりません。
さらに、医院の跡継ぎとしてわが子を医師にする場合は、高額の教育費がかかります。6年間にかかる医学部の学費だけでも、国公立大で約350万円、私立大では安くても約2,000万円、高ければ4,000万円超となります。
なお、医師は収入が高いことから高額なローンを組みやすく、広い家に住める一方でローンの負担に悩むことも少なくありません。加えて、多忙かつ家が広いことから家事代行等のサービスを依頼する医師も多く、サービス費用もかかります。
医師として働けなくなった際のリスク
医師は収入が多い分、生活費も高額になる傾向があります。2021年の総務省の調査によると、年収が863万円以上ある世帯の平均的な1ヵ月の消費支出額は、424,993円です。
毎月かなりのお金を使っているため、引退後に収入が大幅に減少した場合、生活水準を落として消費支出を減らす覚悟が必要です。また、病気などにより予想していたより早く引退しなければならなくなるリスクもあります。
一度上げた生活水準を下げることは、非常に困難です。買いたい物を買えない、これまでより安い商品を買うといった生活はストレスがたまります。
老後もなるべくストレスなく生活するためには、現役のうちに必要な備えを作っておく必要があります。
老後も生活水準を維持するにはいくら必要?
それでは、老後も現役時代の生活水準を維持するにはいくら必要なのでしょうか。
2021年の総務省の調査によれば、年収863万円以上の世帯の平均可処分所得は月額689,966円です。
仮にこの金額を60歳から80歳まで毎月使うとなると、必要な額は約1億6,500万円、一般に高額所得者が使うとされる月額80万で計算すると約1億9,200万円です。
公的年金によって賄える分や投資などで継続的に得られる収入については、貯蓄として準備する必要がないものの、生活水準の維持には相当な額が必要になることがわかります。
これだけの金額を引退間際になってから準備することは、現実的ではありません。収入の多い現役のうちから計画的に資産を作ることが大切です。
「公的年金での生活」は現実的ではない
医師が老後に受け取れる公的年金は、いくらになるのでしょうか。公的年金には20歳以上60歳未満の国民すべてが対象となる国民年金と、会社に勤務する人などが加入する厚生年金があります。
勤務医で厚生年金を払っている方も多いでしょう。以前は公務員などを対象とした共済年金もありましたが、現在は厚生年金に一元化されています。
公的年金の金額は、開業医で月額6万円程度、勤務医で月額20万円程度と考えられます。勤務医の金額が高い理由は、厚生年金が上乗せされているためです。
これまでの生活水準から考えて、この金額で生活することは現実的ではないでしょう。しかも、この金額は長期にわたり年金を納め続けた人を想定しており、医師のように様々なキャリアを経る職業の方は公的年金の未加入や払い漏れなどにより受け取れる年金額がさらに少なくなるおそれもあります。
公的年金だけに頼らない私的年金のすすめ
公的年金で生活を賄えない場合は、それ以外の収入を考えなければなりません。ここで考えられる仕組みが公的年金以外の私的年金制度です。
まず、日本医師会が運営している「医師年金」があります。医師年金は、加入すれば全員が払い込むことになる基本年金保険料と、任意で払い込む加算年金保険料があります。
保険料は基本年金保険料が月額1万2,000円、加算年金保険料は1口6,000円で上限はありません。
原則として65歳から受給開始となり、加入者が存命である限り、一生涯年金を受け取れます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)をご存じの方も多いでしょう。iDeCoは拠出金の支払いと運用を行うことで60歳以降に年金を受け取れる仕組みです。
また、拠出金の支払いや運用の時点で税制上の優遇措置が設けられています。このため現役時代には節税手法として、老後は公的年金に上乗せできる私的年金として二重のメリットを受けられます。
これらの私的年金制度を上手に使うことで、貯蓄の形で高額の資産を準備しなくても継続的に収入が得られます。
「引退後の生活」をイメージして早めの準備を
医師は高収入とはいえ支出も多く、気づいたら貯蓄ができていないことも考えられます。もはや公的年金さえあれば安心できる時代ではありません。ご自身が引退した後の資金は、ご自身で準備する覚悟が必要です。
そのためにもまずは必要になる金額をシミュレーションし、できるだけ早く準備を始めましょう。高所得の医師はいったん貯蓄の準備を始めれば様々な手法を検討できます。
安心できる老後のために、引退後の生活をイメージするところから始めてみてはいかがでしょうか。
- 著者:
株式会社幻冬舎ゴールドオンライン
- 提供:
- © Medical LIVES / シャープファイナンス
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