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リニアからサーキュラーへ ~循環型経済とは~

リニアからサーキュラーへ ~循環型経済とは~

画像はイメージです。

医療機関とサーキュレーターエコノミーの関係

近年注目のサーキュラーエコノミー。
海外では、医療機関でもサーキュラーエコノミーの実現を目指した取り組みが始まっています。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは

地球環境にかかわる課題として、循環型経済もしくはサーキュラーエコノミーの実現というテーマが注目されています。

従来から「リサイクルの推進」が言われ、廃棄物をできるだけ出さないようにしたり(リデュース)、再活用(リユース・リサイクル)が推進されていますが、最終的には廃棄物となるリニア(直線的)な世界が前提になっていました。

対してサーキュラーエコノミーでは、「廃棄物と汚染を発生させない」という考えが元にあります。再利用や資源再生しやすい製品設計にすることや、製品寿命を延ばすためのメンテナンス、リースやシェアリングによる利用効率の向上なども重視されています。

その実現のためには社会全体の製造・使用の仕方、資源再生や再利用の仕方を大きく変革する必要があります。環境保護活動という面のみならず、サーキュラーエコノミー(経済)という言葉が表すとおり、新たな経済・ビジネスを構築するという発想が含まれています。

リニアからサーキュラーへ ~循環型経済とは~

出典:環境省資料

サーキュラーエコノミーと気候変動問題

サーキュラーエコノミーは資源節約を通じ地球環境自体の保護になりますが、同時に二酸化炭素削減の面でも欠かせないことは意外と知られていません。循環型社会への移行を推進する「エレン・マッカーサー財団」という英国拠点の財団が、興味深いレポートを出しています。

現在、二酸化炭素の削減努力が全世界ベースで行われています。対象となるのは電気、ガソリンを中心とした動力源(エネルギー)に関わる削減取り組みです。

ところが、同財団によると、世界中のエネルギーを再生可能エネルギーに移行することができても、温室効果ガス排出の55%にしかアプローチできない。残る45%は製品・食料の製造過程で排出されていて、この削減はサーキュラーエコノミーの手法によって初めて削減することができるのだといいます。

言い換えれば、古くなったものは廃棄して新しいものをまた一から製造するという従来のリニアな世界から、廃棄を出さずに再利用したり再生していく循環的(サーキュラー)な世界にすることで、製造過程等で排出される二酸化炭素を削減することができるということなのです。

リニアからサーキュラーへ ~循環型経済とは~

出典:エレンマッカーサー財団資料

サーキュラーエコノミーの3つの形

サーキュラーエコノミーを進めるうえで大事な3要素は以下のとおりです。

①製品デザイン・設計をリサイクル可能なものにしていく
②なるべく長く使う
③資源再生のサイクルに回す

エンドユーザーである私たちができることは「②なるべく長く使う」と「③資源再生のサイクルに回す」ということです。

医療においては注射針/筒・検査機材・その他液に付着したものなど、さまざまなものが感染防止・安全衛生の観点から使い捨ての設計になっており「②なるべく長く使う」こと、そして「③資源再生のサイクルに回す」ことが困難という実情があります。

その課題を解決するものとして、高熱の電気炉で廃棄物を完全無害化溶融する取り組みも始まっており、医療廃棄物の領域においてもサーキュラーエコノミーへの関心、取り組みが高まっていくものと思われます。

海外医療機関での「アップサイクル」の事例

リサイクルが再度使うことだとすると、アップサイクルは元よりもより良いものにするというニュアンスがついた新語です。

デンマーク北東部の街ラナースでは、ある病院の敷地に公園をつくる際に、まず、地域の病院がリサイクルに適したプラスチックであるポリエチレンとポリプロピレンを分別収集する仕組みを確立し、約300キロの廃プラスチックをアップサイクルして公園を造りました。遊具は医療で使われ廃棄されたプラスチックをアップサイクルして作られており、新しいプラスチックを使った場合と比較して、CO2排出量を約半分に削減することができたとされています。

病院の患者や家族そして地元の人々の憩いの場となっており、遊び場になると同時に、ごみを正しく仕分けすることや、すでにある素材を他のものに活かすことの大切さを伝える場所となっているということです。

こうした取り組みが定常化することで、資源再生がビジネスに乗り、経済活動としてのサーキュラーエコノミーが発展していくことが期待されます。

著者:
芙蓉総合リース株式会社 経営企画部 CSV推進室 室長 水谷 高
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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